公益、労働者側、使用者側の3者構成で労働法制・政策の議論を展開している現在の「労働政策審議会」(厚労相の諮問機関)について、厚生労働省は委員構成のあり方などに踏み込んだ検討を開始する。7月中に初会合を開き、年明けにかけて「労働政策の決定に関するプロセス(案)」を取りまとめたい意向だ。
今年6月、塩崎恭久厚労相が「時代に合った委員構成の見直し」に言及してから注目度が急速に高まっていたが、既に昨年6月の政府の規制改革会議でも提言されている課題。国際労働機関(ILO)の加盟国として、これまでの長きにわたる慣例を変える「改革案」となる見通しだけに、有識者会議の今後の議論内容だけでなく、それを注視する関係団体などの反発は必至で難航も予想される。
労政審は、大学教授ら有識者による公益委員、主に連合から選出された労働者側委員、経団連をはじめとする経済団体による使用者側委員――の3者で構成される。上部組織と位置付けられる労政審は3者各10人ずつ。加えて、政策の案件ごとに具体的な議論を行う下部組織の各分科会と各部会を持つ組織だ。
近く設置される会議の名称は、「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」。塩崎厚労相は6月の会見で「非正規の人たちの声が労政審でフェアに代弁されているかというと必ずしもそうなっていない。労働の代表というのは誰のことを指しているのか絶えず見直さなければいけない」と発言。また、自民の有志議員の勉強会は、今年2月に労政審のあり方に関する見直しを厚労相に提言している。
さらに、昨年6月の規制改革会議では、「多様な働き手のニーズに応えていくため、例えば労働政策審議会の構成委員について、現在の三者構成を否定するものではないが、従来からの主要関係者にとどまらず広く吸収していく検討も進めるべき」という趣旨の提言をしている。
現在の労政審では、立場の原理原則論に終始し過ぎた論戦も目立ち、実質的に意見集約に落とし込めない「課題解決力の低下」も指摘されていた。他方、この数年は官邸や内閣府などの「会議体」で決まった方針や方向性が、厚労省の労政審に“降りてくる構図”に、労働者側から強い懸念と反発の声が挙がっている。
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