ホワイトカラーを中心とした民間職業紹介の事業者団体である日本人材紹介事業協会(渡部昭彦会長)は8日、東京都港区で2016年度総会を開いた=写真。役員改選では、渡部会長(ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス社長)が選任され、副会長は3人体制から従前の2人体制に戻し、藤井太一氏(ACR社長)を再任、新たに服部啓男氏(ジェイエイシーリクルートメント副社長)を選出した。副会長を務めてきた高橋広敏氏(テンプHD副社長・インテリジェンス非常勤取締役)と、水谷智之氏(リクルートHD顧問)は退任した。
人材協は、人材サービス業界団体の横断的組織である人材サービス産業協議会(JHR・5団体参加)との「連携のあり方」「人材協の今後」などに関する重要なテーマを約1年かけて内部で多面的な角度から議論してきた。また、JHR側も一昨年から「5団体の効果的な発信力のあり方」などを内部で検討し、昨秋からは改めて協議機関を設けて5団体の代表者を委員に今年2月まで議論、翌月の理事会で「報告書案」の取りまとめにこぎ着けている。
このほか、人材協は民間有料職業紹介事業の柔軟性のある規制緩和と求職者視点からの規制強化の両側面を持った職業安定法改正に向けた厚生労働省の議論の展開を注視するなど、協会として複数の重い課題とテーマを抱えている。
こうした背景や底流を踏まえて、渡部会長は総会冒頭のあいさつで現状とこれからへの意気込みと決意を披露した。特筆される内容が凝縮されていたためテーマごとに記すと、「人材業界を取り巻く環境は皮膚感覚で分かる通り、ここ2~3年のいい流れに乗っている。有効求人倍率や失業率というマクロ的な指標もさることながら、いわゆる人手不足は深刻な状況だ」。
「そのような中、人材協としてこの1年間、多面的に活動を展開した。第一に協会は仲間を増やすというのがひとつの大きな使命。この1年間、協会の会員数はおよそ約210社から230社ほどになり、10年ぶりに会員数が増加に転じた」。
「その要因としては、医療系協議会の立ち上げだ。従来、われわれの協会は法制倫理や研修など機能別の委員会組織で成り立っていたが、よりビジネスモデル上、同じ関心を持つ産業、業種で集まってもらい、さらに現在、議論を重ねている」。
「もうひとつは、いわゆる業界団体。業界としての考え方を対外的に発信していくことが至上命題だ。人材紹介の根拠法である職業安定法の改正の動きが本格始動している。人材協の中に職安法研究会を設けて議論するとともに、JHRの場でも人材協として職安法について議論している。1999年の大改正以来となるこの状況を注視していきたい」。
「また、今年ということではないが、われわれの協会は今後2年、3年、中長期的に見てどうするかということで、「あり方検討会」を設立し、この1年間5回、6回と議論を重ねた。ポイントは『引き続きこの協会を拡大していこう』ということ。人材協は前身も含めれば、もともとは独立系のエグゼクティブサーチの会社が集まってスタートした団体であり、その後、いわゆる資本系、総合大手、専門、いろいろな方々が集まってここに至っている協会だ。従って、多様性のある協会ともいえる。さらに、昨今、非常に存在感を高めているネット系の免許を有する(取得意思のある)職業紹介、人材紹介会社も含めて、われわれのウイングを拡大して仲間を増やしていきたい」。
上記の発言を基軸に、協会の専門委員会の組織改編・再編も盛り込んだ新年度の事業計画をまとめた。
総会の後、元同協会副会長の村井満・日本プロサッカーリーグ チェアマンが「Jリーグ百年構想」と題して講演した。村井氏は、Jリーグが企業色を薄めて「地域密着」を掲げる理由を解説し、「プロ選手としての成功=(技術力+身体能力)×人間力」という公式を披露。短命選手の多いJリーグで長期間活躍できる選手には「傾聴力」「忍耐力」「自己啓発」など全50項目に及ぶ「人間力」の高い選手が多い事実を解説し、人材紹介業にとっても示唆に富む内容だった。
なお、JHRは6月下旬の総会で、検討を重ねてきた「JHRあり方委員会」を基に立案した「機動的な新たな組織体制」の承認や任期満了に伴う役員改選などを行う予定だ。
【関連記事】
「虚偽の求人企業」と「虚偽の広告をした求人情報提供企業」への罰則を提言
厚労省の雇用仲介事業検討会が報告書
今秋から労政審で職安法改正の議論(6月3日)
2015年度下半期の転職紹介実績、人材協調査
8.5%増の2万4013人、活況続くも伸び率に一服感(5月16日)
ホワイトカラーの人材紹介事業者団体からヒアリング、厚労省の雇用仲介事業検討会
ウェブ求人情報会社との"ルールの差異"も焦点に(3月29日)