NPO法人の人材派遣・請負会社のためのサポートセンター(高見修理事長)は10日、東京・市ヶ谷で2016年第2回派遣・請負問題勉強会(アドバンスニュース協賛)を開いた=写真。今年の統一テーマは「改正派遣法施行後の新たな課題~企業経営における労使関係を考える」で、この日は「企業経営からみた労使関係とその実際」。
労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎主席統括研究員=写真右=が「企業経営にとっての労使関係」について概説した後、同機構の呉学殊主任研究員が「経営資源としての労使関係」、良品計画の松井忠三元会長(現名誉顧問)が「無印良品の、人の育て方」と題して講演した。
濱口氏は、労働基準法などでは「労使対等」が規定されているものの、現実には対等ではなく、労働者側が声を出しにくいのが一般的であり、両者をつなぐ集団としての労働組合の重要性を強調した。
これを受けて呉氏=写真左=は、一時は業績不振に陥った資生堂やケンウッドグループの回復事例を挙げ、そこで労組が果たした役割を詳細に解説。大企業に限らず、中小企業でも経営者の姿勢次第では労使コミュニケーションが可能な好事例を紹介して、「良好な労使関係は重要な経営資源になる」と述べた。
松井氏=写真下=は、右肩上がりの業績上昇が続いた良品計画が、2000年になって大きくつまづいた経緯を説明し、どのようにして経営改革を果たしたのかを説明。店舗業務マニュアルの「業務基準書」、適材適所の配置を行う「人材委員会」の設置といった施策を講じて、人材育成と社風改革に取り組んだことが奏功したと述べた。
この日は、企業経営にとって労使の良好な関係が重要なカギになるという点で講演者らの意見は一致したものの、労組加入者は年々減少の一途をたどっており、集団的労使関係の稀薄化という深刻な現状が課題となっている。
次回は6月1日、「企業経営からみた労働組合とその実際」をテーマに開く。