2016年春闘は16日、自動車、電機などの主要企業で構成する金属労協の企業が一斉に回答した。ベースアップ(ベア)でみると、トヨタ自動車が1500円(昨年4000円)、ホンダが1100円(同3400円)、日立製作所、パナソニック、三菱電機などが各1500円(同3000円)を回答するなど、軒並み昨年を下回る水準となった。
ベアは3年連続となったが、過去2年間の大幅アップに比べると鈍化した。その分、ボーナスなどの一時金は満額回答する企業が多く、経営側の慎重姿勢が色濃く反映される回答が目立った。前年と比べることのみに焦点をあてるメディアに対し、連合は同日の会見で、「デフレ脱却」と「すべての労働者の処遇改善」を掲げる今年の春闘の狙いからは大きく外れた出足ではないことを強調した=写真。
中国の景気減速など、海外経済の不透明感が増したのに加えて、国内も消費活動が活発化せず、昨年10~12月のGDPがマイナスに落ち込むなど、減速懸念が強まった。さらに、景気テコ入れを狙って日銀が実施した「ゼロ金利」政策が一時的に円高・株安を招き、メガバンクの中にはベア要求を見送る銀行も出るなど、労組側の要求にブレーキが掛かった形だ。
今年の春闘も、政府が企業側に大幅賃上げを要請する「官製春闘」の色彩が濃く、それを受けて連合などの労組側は「月例賃金の引き上げ」を掲げたのに対して、経団連などの企業側は「年収ベースの賃上げ」を主導してきた。
この日、経団連の榊原定征会長は「多くの企業が3年連続となるベア実施と、昨年以上の賞与・一時金の支給を回答したことは、デフレからの脱却と持続的な経済成長の実現という社会的要請も重視しながら、自主的な経営判断の結果として、自社の収益に見合った積極的な対応をとったものであり、率直に歓迎したい」とのコメントを発表した。