労働政策研究・研修機構(JILPT)は16日、東京・本郷で労働政策フォーラム「シングルマザーの就業と経済的自立」を開いた。日本でも増えつつある「子供の貧困の連鎖」を食い止めるため、主に離婚家庭の母親の就労支援をどう進めるかがテーマだ。
講演者と講演内容は、宮本みち子・放送大学副学長「女性の経済力強化は母子の貧困化を防止する」(基調講演)▽周燕飛・同機構副主任研究員「シングルマザーへの就労支援」▽田中恵子・千葉県野田市母子・父子自立支援員「支援員からみたシングルマザーのキャリア開発」▽河村暁子・東京ボランティア・市民活動センター主任「中間支援組織の取り組み」の4人に、パネルディスカッションでは阿部彩・首都大学東京都市教養学部教授がコメンテーターとして加わった=写真。
宮本氏は、日本の家族、雇用、社会保障のあり方が変化した結果、現代は女性と子供の貧困がセットになっている実情を解説。周氏は、1990年代後半に貧困対策が本格化した米英の事例と2000年代に入ってから始まった日本の政策を対比させながら、「福祉から就労」へ政策転換を図っている日本の問題点を指摘した。
田中氏は、シングルマザーの相談・支援にあたる行政窓口として感じたことを披露し、「母親の心理をくみ取って、離婚前から丁寧なフォローを心掛けている」と述べた。河村氏は、ゴールドマンサックス社の「ギブズ・コミュニティ支援プログラム」などを紹介しながら、NPOなどの支援団体と企業などのボランティア支援をつなぐ中間支援組織の役割を解説した。
パネルディスカッションでは、「養育費問題」がテーマの一つに挙がったが、田中氏は「前夫とは関わりたくないという女性もいて、養育費をもらえない女性も多く、各種の公的救済策を提案している」と話した。また、河村氏は、「企業ボランティアの場合、様々なリソースを持ち合わせており、それらをうまくマッチングできれば、多様な支援が可能になる」と述べるなど、支援現場ならではの発言が相次いだ。
厚生労働省の2011年度「母子世帯等調査」によると、「母子のみ世帯」は約75.6万世帯あり、そのうち8割以上の母親が就労しているものの、非正規が半数を占めており、平均年間収入は約181万円と父子家庭の360万円の半分。非正規世帯になると125万円で、正規世帯の270万円の半分以下という「貧困家庭」となっている。子供の相対的貧困率は09年時点で15.7%となり、OECD加盟国中10番目の高さだ。