連合の神津里季生会長=写真左=は、政府が5月に策定する「ニッポン1億総活躍プラン」に、「同一労働・同一賃金」実現に向けた施策を盛り込む動きについて、「7月の参議院選挙を相当意識したアドバルーンか、争点隠しにしか見えない」などと指摘した。18日、連合会館で開かれた定例会見で、アドバンスニュースの質問に答えた。
政府は今年に入って、正規と非正規による賃金格差を是正する「法制化」に踏み切る意向をマスメディアを“活用”しながら発信している。政府や自民党というより、安倍晋三首相の「肝いり」と位置付けている模様だ。しかし、昨年の通常国会で提出したものの審議入りすらできていない労働基準法改正案など、各種労働法制が国会で渋滞しているだけに、実現性について疑問視する向きもある。
この日の会見でアドバンスニュースは、「政府が同一労働・同一賃金の法制化の検討をし始め、5月に(労働政策審議会の議論のたたき台を)公表するスケジュールのようだ。うがった見方をすれば、18歳以上が初めて有権者となる7月投開票の参院選を前に、現実的には重い案件の労働法制が居並ぶ中で、政府の本気度に懸念をいだく。会長が注視している点はどこか」と質問した。
これに対し、神津会長は「参院選を相当意識したひとつのアドバルーンかと思う。そもそも、同一労働・同一賃金という認識を今さらのごとく言うのであれば、なぜ昨年の通常国会で改正労働者派遣法と同時に成立させた同一労働・同一賃金法を当初の法案から骨抜きにしたのか」と、経緯を踏まえて疑問を呈した。
そのうえで、「必要があれば3年のうちに考えればいい、みたいな捻じ曲げをしておいて、ここに来て同一労働・同一賃金というのは、しらじらしいにもほどがある」と厳しく指摘。続けて、「そういう(参院選の)ことも意識したタイミングで出してくるのか分からないが、すでに自民党の中の関係部会でも『すぐにできるということじゃない。検討のスタートだ』という言葉も漏れ聞こえる。正直、争点隠しみたいに映る」と見解を示した。
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