労働政策研究・研修機構の労働政策フォーラム「移動する若者/移動しない若者~実態と問題を掘り下げる」が14日、都内で開かれた=写真。過疎化に伴う「消滅可能性都市」や「一億総活躍社会」など、若者がキーワードになる政策議論が賑やかな点に対して、若者の移動の実態について実証研究の面から考えるのが狙い。
本田由紀・東大教育学研究科教授が趣旨説明した後、4人の研究者が次のような報告を行った。堀有喜衣・同機構主任研究員「若者の地域移動はどのような状況にあるのか」▽林玲子・国立社会保障・人口問題研究所部長「女性の活躍と人口移動」▽片山悠樹・愛知教育大教育学部講師「若者・地域移動・くらし向き」▽轡田(くつわだ)竜蔵・吉備国際大社会科学部准教授「地方に暮らす若者の意識」。
林氏は同研究所の「人口移動調査」などを使って分析した結果、地方から都市部への人口移動比率に大きな変化はなく、「流出説は確認できなかった」と報告。林氏は総務省の国勢調査などの分析結果から、「男性の方が女性より動き、女性は都市に入ると出ていかない」傾向のあることを指摘した。
片山氏は全国の同一若者の追跡調査をして移動者と定住者を調べたところ、学歴や生活レベルによって、両者の意識にかなりの違いのあることを指摘。轡田氏は広島県内の府中町と三次市の若者を対象にした比較調査を基に、生活満足度には大きな差がなかったことを報告した。
若者層の地方定住を促すにはUターンやIターンの優遇策だけでなく、大学などの教育機関、企業などの就労問題、生活レベル、家族関係といった多くの要因が絡むだけに有力な決定版はなく、課題のむずかしさを浮き彫りにした。