衆院本会議で3日、外国人の技能実習制度を抜本的に見直す「外国人技能実習適正実施法案」が審議入りした。所管は法務省と厚生労働省。同法案は、認可法人の外国人技能実習機構(仮称)を新たに創設し、「管理監督体制の強化」と「制度拡充」という両面を進めるのが柱。あす4日以降、衆院法務委員会で審議される。
現行制度をめぐる国内外からの批判や課題の打開に向けた政府提出法案で、この日は、上川陽子法相が趣旨説明した後、鈴木貴子(民主)、重徳和彦(維新)、畑野君枝(共産)の3議員が登壇して質問。上川法相と塩崎恭久厚労相が答弁した。1993年の制定以降、入国管理法や労働関係法令の違反が絶えず、国内外から人権上の批判も挙がっていた同制度。3議員も入管法、労働基準法違反、人権問題の観点を中心に課題と問題点を厳しく指摘した。
新法のポイントをまとめると、「管理監督体制の強化策」では、
1、(現行)政府・当局間の取り決めがない。保証金を徴収しているなどの不適正な送り出し機関の存在。
(見直し後)実習生の送り出しを希望する国との間で、政府・当局間の取り決めを順次作成することを通じ、相手国政府・当局と協力して不適正な送り出し機関の排除を目指す。
2、(現行)監理団体や実習実施者の義務・責任が不明確であり、実習体制が不十分。
(見直し後)監理団体については「許可制」、実習実施者については「届け出制」とし、技能実習計画は個々に「認定制」とする。
3、(現行)民間機関であるJITCOが法的権限のないまま巡回指導。
(見直し後)新たな外国人技能実習機構(認可法人)を創設し、監理団体などに報告を求め、実地に検査するなどの業務を実施する。
4、(現行)実習生の保護体制が不十分。
(見直し後)通報・申告窓口を整備。人権侵害行為などに対する罰則などを整備。実習先変更支援を充実させる。
5、(現行)業所管省庁などの指導監督や連携体制が不十分。
(見直し後)業所管省庁、都道府県などに対し、各種業法などに基づく協力要請などを実施。これらの関係行政機関から成る「地域協議会」を設置し、指導監督・連携体制を構築。
また、「制度の拡充策」では、
1、優良な監理団体などへの実習期間の延長または再実習。3年間から5年間を想定。(いったん帰国後、最大2年間の実習)
2、優良な監理団体などにおける受け入れ人数枠の拡大。常勤従業員数に応じた人数枠を倍増。(現行の最大5%までを改め、最大10%までなど)
3、対象職種の拡大。地域限定の職種・企業独自の職種(社内検定の活用)、複数職種の同時実習の措置、職種を随時追加する。
「優良な監理団体など」とは、法令違反がないこと、技能評価試験の合格率、指導・相談体制について一定の要件を満たしている監理団体および実習実施者を指している。この新法は、法案が通れば機構創設を皮切りに、ただちに施行される。
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