与党の自民と公明、野党の維新で12日の採決を決めていた衆院厚生労働委員会について、11日夜、採決を来週に先送りする方向となった。安倍晋三首相の午前10時から約2時間にわたる質疑に対する答弁、午後からは主に塩崎恭久厚労相の答弁など、「採決までの流れ」が各政党への時間配分まで詰める格好で決まっていたが、「すべての国会審議に応じない方針」を宣言した民主などに配慮し、政府は一転して12日の採決見送りの方針を固めた。来週には衆院を通過し、参院に送られる公算だ。
派遣法案に限らず、法案には与野党で真剣勝負の賛否があって当然。さらに、質の高い議論を積み重ねるのも国会の役割だが、一定の審議時間を重ねたら「採決」で可否を明確にし、相応の進め方に知恵を絞るのも立法府に託された責務だ。今回の見送りの背景には、国会全体を巻き込んだ政治闘争が横たわっている。
いずれにせよ、審議を踏まえて段取りを整えた「採決」が先送りされることは、今国会の召集日(1月26日)に安倍首相が自民党代議士会で訴えた「緊張感を持って成果をだしていく改革断行国会にしていく」という力説が、昨秋の臨時国会(政府提出法案の成立率67.7%)を彷彿(ほうふつ)とさせる「足踏み」と、「国会日程ばかりにとらわれた決められない政治」との批判を免れられないだろう。
また、本当の意味で働く人たちに主眼を置いた方策として、政策面では10月1日施行の派遣法における「労働契約申込みみなし制度」は延期するなどの対応も念頭に入れるべきだ。
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