派遣・請負問題の今年度2回目の勉強会「雇用改正の動きと今後の人材サービスを考える」(NPO法人人材派遣・請負会社のためのサポートセンター主催、アドバンスニュース協賛)が12日、都内のホテルで開かれ、約300人が参加した=写真上。この日は中央大学経済学部の阿部正浩教授が「日本経済を支える雇用政策上の課題と今後とるべき政策的対応」、大阪大学大学院法学研究科の小嶌典明教授が「労働市場の現状とこれからの雇用・労働法制」と題して講演した。
阿部氏=写真中=は、厚生労働省の「雇用政策研究会」委員、内閣府の「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」委員、3月末にスタートした厚労省の「雇用仲介事業の在り方に関する検討会」の座長などを務めており、「働く意思、能力、意欲のある人がきちんと仕事に就ける社会が、日本の労働市場が目指す理想的な状態」と位置づけたうえで、そこに近づいているかどうかを完全失業率やUV(失業と未充足求人)、人口減少と進む高齢化などの推移を示しながら解説した。
また、「ひとりあたりの生産性を高めなければ、現在のような経済は持続不可能で、女性や高齢者を一層活用する必要がある」と指摘し、「生産性向上」をキーワードに労働力の柔軟な流動化の必要性や定着率を高めるヒントと課題を多面的な角度からひも解いた。
小嶌氏=写真下=は、小渕内閣から第一次安倍内閣まで、規制改革委員会の参与などとして雇用労働法制の改革に従事する一方、法人化の前後を通じて計8年間にわたり国立大学における人事労務の現場で実務に携わった経験則を踏まえて講演。年頭から連載中の『週刊労働新聞』(発行・労働新聞社)の寄稿を活用しながら、労働契約法などを含む労働法制にある「一律規制の限界」を指摘し、「求められるのは程良い規制だ」と強調した。
後半は、労働者派遣法について複数の規制項目の成り立ちや経緯などを説明。この日に国会で審議入りした政府提出の労働者派遣法改正案についても時間を割き、事実に反する指摘があることを紹介するとともに、一方で“政令26業務”が撤廃されることが生み出すリスクなども説いた。