衆院厚生労働委員会が7日、渡辺博道委員長の職権で開かれ、安倍晋三首相出席のもと、規制のかけ方を抜本的に見直す政府提出の労働者派遣法改正案について質疑を行った。しかし、法案そのものに反対の民主や共産など野党4党に加え、与党の進行や5日の同委員会における塩崎恭久厚労相の答弁の一部に不満を持つ他の野党も「同調」する形で反発。終日、野党が審議拒否したため、この日は与党単独での審議となった。
政府・与党は、「重要広範議案」の審議過程に必要となる首相出席の質疑を踏まえたことで、来週12日に委員会採決、翌13日には衆院本会議での採決に持ち込みたい考え。参院での審議は、安倍首相の三カ国歴訪の外遊(9日~17日)後に速やかに進めたい方針だが、会期末を3週間後に控え、予断を許さない状況が続く。
開会の冒頭、野党の指摘に応えるため、塩崎厚労相が5日の答弁で一部誤解を招く可能性があった点について「再答弁」し陳謝した。野党は承服できないとして、そのまま退席。午後からの安倍首相出席の場における質疑も「環境が整っていない」などとして渡辺委員長の出席要請に応じなかった。衆院厚労委における党派別構成は、定数45人中、自公で31人、野党は全部合わせて14人となっている。
一方で、与党の高鳥修一委員(自民)と古屋範子委員(公明)が安倍首相と塩崎厚労相に質問。主な質疑としては、「今回の派遣法改正案は多様な働き方に資するものなのか」との問いに、安倍首相が「自らの働き方として、派遣を積極的に選択している人については待遇を改善する方法などを図るとともに、正社員を希望する人についてはその道が開かれるようにする。働きたいと希望するあらゆる人が社会で活躍の場を目指せるよう柔軟で多様な働き方が可能となることを目指しているが、今回の労働者派遣制度の見直しはその実現に向けた重要な取り組みと考えている」と強調した。
また、「『生涯ハケン法案』や『正社員ゼロ法案』という批判をされる人もいるがどのような見解か」との投げかけに、安倍首相は「一般的に派遣という働き方には雇用の安定やキャリア形成が図られにくいという面があるのは事実」としたうえで、「このため、改正案では派遣会社に対して派遣期間などを通じたキャリアコンサルティングや計画的な教育訓練を新たに義務付けるほか、派遣期間が満了した場合には正社員になったり、または別の会社などで働き続けたりすることができるようにする措置を義務付けている」と主張。
続けて、「派遣就労への固定化を防ぐための措置を強化しており、派遣先にもこれまで以上に情報提供などを義務付ける。従って『生涯ハケン法案』や『正社員ゼロ法案』の指摘は全く当たらないし、そういうレッテル張りは不毛な議論で、それぞれが柔軟な働き方をできるようにすることで自己実現が図れる仕組みをつくっていくことが政治の責任だ」と答弁した。
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