政府提出の労働者派遣法改正案について、衆院厚生労働委員会は29日、前日の本会議での各党代表質問を踏まえ、塩崎恭久厚労相があらためて厚労委で法案の趣旨および提案理由の説明を行い、散会した。渡辺博道委員長は今後の日程に関し、31日午前8時50分から理事会、同9時から委員会審議を開始すると伝えた。
マスコミの注目度が高い派遣法改正案は、先の通常国会の衆参予算委員会の場でも、また本臨時国会の予算委員会の場でも、反対する民主、共産、社民が中心となって一定時間取り上げ、改正案の骨格や目的、問題点などについて政府答弁を引き出している。従って、概ねの質疑応答はこなしてきているのが実情で、31日から審議は一連のやり取りの単なる“繰り返し”にならないよう、制度全体を通した大局的な議論が期待されている。
また、一部メディアや政党が指摘する問題点も重要かつ貴重だが、一方で(1)派遣元と派遣先の責務を増やして働く人のキャリアアップの義務化を盛り込んだ点、(2)政令26業務の業務区分撤廃によって、現行法で事実上期間制限がなかった多くの派遣労働者が「生涯派遣」でない選択も自分の意思で選べる点、(3)すべての事業者を許可制にすることで悪質事業者や人材ビジネスをするうえで体力や資質に欠ける事業者を大幅に撤退、退出させることができる点――などを含み合わせた軸となる項目の議論を深められるか、国会議員の問題意識や資質も同時に問われている。
この改正法案だけで、制定から30年の間に幾度もの改正を重ねてきた問題点のすべてをクリアにできるとは言えない。内在している他の課題の議論に進めていくためにも、与党だけでなく、法案に「賛成」または「基本的に賛成」の野党、そして真っ向反対の野党との高度な“集中審議”が着目される。そして、そうした質の高い多面的な議論を11月初旬までにどれだけ「昇華」できるかも、政府が目指す会期内成立の焦点となる。
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