事務職の派遣・紹介事業の大手であるスタッフサービスは27日、事務系人材を正社員として雇用し、企業のオフィスワーク業務に派遣する「事務職の常用型派遣事業」を11月から本格展開する、と発表した。政府が国会に提出している労働者派遣法改正案には、派遣社員に計画的な教育訓練などの「キャリアアップ措置の実施」が派遣会社に義務化されており、そうした今後の派遣制度の全体的な動きをとらえた新事業となる。2017年3月末までにこの事業を通じて5000人規模の就業機会の提供を目指している。
新事業は「正社員からはじめる未来。」をキャッチフレーズに、「ミラエール」と名付けた。狙いは、高まる企業と求職者双方のニーズへの対応と、派遣社員のキャリア形成支援の推進だ。同社によると、景気回復と有効求人倍率の上昇とともに、企業の「安定的に人材を確保したい」というニーズが増加し、全国的に人手不足が深刻化。また、求職者の「正社員として働きたい」というニーズも強くなっているため、登録型の派遣社員としての募集では人材の獲得が困難で、派遣先企業に対して十分に人材を供給できない状況が続いていたという。
他方、派遣法改正案には派遣社員に対するキャリアアップ措置の義務化などが盛り込まれていることもあり、数年後の展開も視野に入れて新事業の本格化に乗り出した。同社では、事務職派遣領域の常用型派遣事業の開始によって、企業への安定的な人材の供給の強化と、派遣社員のキャリア形成支援に注力する考えだ。現在、首都圏と名阪地域で先行実施している。
事務系で一般的な「登録型派遣」は、仕事のあるときだけ派遣会社と派遣労働者との間に雇用契約が結ばれるのに対し、「常用型派遣」とは派遣会社が常時雇用する派遣労働者を職場に派遣することで、派遣先との派遣期間が終了しても派遣会社と派遣労働者の雇用関係は継続する。今回進める「ミラエール」のキャリアプログラムについて同社は、「成長意欲や潜在能力があるにも関わらず、景気の後退などが主な原因で職種や雇用形態にミスマッチを抱え、スキルや経験を充分に積むことができずにいる人材が多く存在している」と分析。「そうした人材を当社で正社員として雇用し、実際に派遣先で就業してもらいながら独自のキャリアプログラムに沿って派遣先と協同して育成していきたい」としている。
こうした派遣元による「正社員化」や「無期雇用化」などを模索した事業戦略の検討は、大手派遣元を中心に昨年夏ごろから水面下で進行しており、登録型の有期雇用と並行しつつ、今後も各社がそれぞれの特性を生かした形で「新事業」が打ち出されていくと見られる。