規制のかけ方を抜本的に見直す労働者派遣法改正案について、政府・与党は臨時国会召集の29日以降の早い段階で閣議決定し、即日、国会に提出する方向で最終調整に入った。「規制の緩和か強化か」といった既存の色分けを超えた抜本改正の一歩となるだけに、臨時国会の焦点のひとつとなりそうだ。同法案については、与党の自民、公明のほか、一定の議席数を有する野党の次世代の党なども賛成の意向を示しており、民主党や共産党、社民党などが強い反対姿勢を貫いている。
同法案は、制定から30年の節目となる来年4月の施行を目指しているが、これまでの時代背景や雇用を取り巻く環境変化に伴い、「政治法」との指摘が挙がるほど度重なる“継ぎ足し”の改正を重ねてきた経緯がある。つまり、抜本的とは言え、今回の改正のみで「派遣法の課題がすべて解決」と割り切れるほど単純な構造ではない。しかし、派遣元、派遣先、派遣労働者のいずれに対しても、従来になかった義務や責務、あるいは保護措置が追加されており、期間制限のなかった「政令26業務の撤廃」も含めて大きな転換を迎える。
事務系の有期主体の派遣事業を展開している大手派遣元の中には、3~5年後をメドに派遣元または派遣先での「無期雇用化」の割合が増えるとの観測もあり、既にそうした動きを視野に入れた対応も見られる。また、日本の労働者全体の約3%、非正規労働者の約6%という比較的ボリュームの小さい「働き方」のひとつだが、メディアの注目度、批判的な見方は根強く、業界にはそうした視線を打ち消すさらなる体質改善と意識改革が迫られそうだ。
一方で、今月末で施行から丸2年を迎える、現行法のいわゆる「平成24年改正」について、今回提出予定の同法案には労働政策審議会の審議時間の制約などで盛り込めなかった積み残しの課題や問題がある。悪質事業者の排除や「派遣元、派遣先、派遣労働者の3者にとってより分かりやすい派遣法」をさらに推し進めるためにも、充実した審議を踏まえた同法案の早期成立と、その後の速やかな積み残し課題の議論を望む声も聞かれる。
【関連記事】
派遣法改正案、臨時国会に提出へ 塩崎厚労相 (9月4日)