NPO法人「人材派遣・請負会社のためのサポートセンター」(高見修理事長)は22日、都内で今年3回目の勉強会「労働者派遣法再改正の動きと人材サービスの今後を考える」(アドバンスニュース協賛)を開いた=写真左。今回は、慶応大学大学院商学研究科の鶴光太郎教授が「雇用の規制改革~絞り込まれてきた課題と改革の方向」、トヨタ自動車の荻野勝彦渉外部主査が「産業政策としての雇用政策」と題し、政策立案者、企業人事実務者の立場からそれぞれ講演した。
鶴氏=写真右=は、政府の規制改革会議の雇用ワーキンググループ座長として、昨年6月と今年6月に出した答申を中心に解説した。今年は「多様な働き方の拡大」と「円滑な労働移動を支えるシステムの整備」の2本柱を答申し、前者には労働時間規制の見直し、ジョブ型(限定型)正社員、労働者派遣制度の合理化を盛り込んだ。
しかし、労働時間規制の見直しについては、同じ政府の産業競争力会議から出た「成果型」労働制度の提言が閣議決定され、規制改革会議が提言した「新しい労働時間制度」、「労働時間の量的上限規制」、「休日・休暇取得の強制的取り組み」の「三位一体改革」の考え方が盛り込まれなかったことについて、「(産業競争力に軸足を置いた)雇用改革が政権中枢の目玉施策となり、途中で議論の流れが変わってきた」と、一部に無念さをにじませる場面もあった。
また、後者に盛り込んだ解雇の(最終的な)金銭解決を含む「労使双方が納得する雇用終了の在り方」について、議論の経緯や一部にある誤認を解きながら詳細に説明。日本固有の賃金を含む雇用慣行と解雇ルールが円滑な労働移動を妨げているという基本認識に立ち、「来年の第3次答申に向けて議論を深めたい」との考えを示した。
一方、所属する企業ではなく人事を担当した経験を踏まえた個人的見解として登壇した荻野氏=写真左=は「雇用は経済のサブシステム」との前提に立ち、アベノミクス効果によって日本企業を苦しめてきた超円高などの「6重苦」からかなり解放され、雇用や賃金にもプラス効果が出てきている点を解説した。
そのうえで、新しい労働時間制度、多様な正社員、解雇の金銭解決などについて、政府での議論が「混乱している感もある」と指摘し、仮にこれらの改革が実施されても、「企業の“稼ぐ力”の向上にどこまで寄与するか、相応の時間を要するのではないか」と持論を説いた。
この日は2人の講演に先立ち、アドバンスニュースの大野博司報道局長が派遣法改正案について国会の動向を報告。同改正案は秋の臨時国会に「再提出」されて審議される見通しだが、その際、成立時期を左右するポイントや着眼点などを簡潔に述べた。
今年度の最終となる第4回勉強会は10月14日の予定。