労働政策研究・研修機構(JILPT)主催の労働政策フォーラム「(平成)24年改正労働契約法への対応を考える」が10日、都内で開かれ、企業の人事担当者らが多数参加した=写真。
改正労契法は「5年を超えて更新された有期契約労働者に無期転換権が発生」(18条、対象は2013年4月以降の契約から施行)、「解雇権濫用法理の条文化」(19条、12年8月施行)、「有期を理由にした不合理な差別禁止」(20条、13年4月施行)の3本が主要な柱。とりわけ、無期転換権に対しては企業側、労働者側の双方から不満や疑問が出ており、今後の展開が注目されていた。
これを受け、この日は菅野和夫・JILPT理事長が改正法の解説をした後、渡辺木綿子・JILPT主任調査員補佐が昨年夏に実施した企業向けアンケート調査結果を報告した。また、有期契約社員の雇用安定に向けた取り組みについて、企業側から下二朗・ダスキン労組委員長と西久保剛志・三越伊勢丹HD経営戦略本部マネージャーの2人が現場報告をした。
パネルディスカッションでは徳住堅治、水口洋介、安西愈、木下潮音の各弁護士、濱口桂一郎・JILPT統括研究員の5人が議論。無期転換ルールに対して、徳住、水口両氏は労働側弁護士の立場から「雇用は無期の直接雇用が原則という位置づけからすると、大きな前進」などと評価した。これに対して安西氏は企業側弁護士の立場から「企業側に裁量の余地を残さない悪法」と厳しく指摘、続いて企業側の視点で木下氏は「無期転換ルールが問題になるのはまだ先のことであり、その間に企業側も対策を練るから、結果的に大した事態にはならないのではないか」と予測した。
ただ、無期転換を避けるため、企業側が5年を超える手前で雇い止め措置を講じる可能性があること。また、仮に転換しても、法的にはあくまでも「無期雇用」であって、「正社員」とは限らないことから、待遇面などでどのような扱いになるのか不透明――といった重要な課題が改正法では残されており、パネリストらの間でも「訴訟が増える可能性が高い」などの見通しがもっぱらで、今から4年後は“五里霧中”といったところが実情のようだ。