労働政策審議会(樋口美雄会長)は14日、田村憲久厚労相に対し、「有期労働契約の無期転換ルールの特例等」について建議した。特例とする有期労働者は、(1)一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する人(上限10年)、(2)定年後に同一の事業主、この事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主に引き続いて雇用される高齢者――に絞った。今回の建議を踏まえ、政府は有期雇用の特別措置法案を今国会に提出する。
いわゆる「無期転換ルール」は、昨年4月に施行された改正労働契約法において、同一職場で5年以上働いている有期契約社員(パート、契約などの非正規社員)が無期契約への転換を申し出れば、企業側は拒否できない「5年超ルール」。しかし、昨秋の臨時国会で国政与党の主導において「国家戦略特別区域法」と「改正研究開発力強化法」が成立したのを受け、異例ではあるが、成立した法律を“後追い補完”する格好で無期転換の申し込み権利発生の「特例(例外)」に関する期間などの検討が労政審に委ねられた。
建議にあたっては、労働条件分科会有期雇用特別部会と職業安定分科会高年齢者有期雇用特別部会が合同で検討。昨年12月25日から5回にわたって議論してきた。12月17日の労働条件分科会(岩村正彦分科会長)で、労働者側委員が「立法府の決定とはいえ、労働分野については公労使による3者協議の原則が最優先されるべきではないか。特区法では例外措置にとどまらず、例外が拡散していく可能性もある」と強い懸念を表明し、特別部会の設置となった経緯がある。今回の建議における労働者の条件の(1)については、その対象者の範囲や年収などの具体的な要件について、法案成立後にあらためて労政審で検討することとしている。
この有期の「無期転換ルール」については、昨年夏の一部報道などを受けて、「どの職種、条件でも労契法の5年ルールが10年に延長される」との誤った認識が広がっており、派遣事業者を含めたすべての企業経営陣と人事担当者にとって留意すべき内容だ。
【関連記事】
8割以上で「ブラック企業」の疑い
労働条件分科会で厚労省が発表(2013年12月17日)
「5年ルール」の特例巡って議論
研究開発力強化法で労働条件分科会(2013年11月18日)