有斐閣が主催するシンポジウム「これからの雇用政策と人事」が5日、東京・丸の内で開かれ、政府の規制改革会議・雇用ワーキンググループ(WG)座長を務める鶴光太郎・慶大大学院教授ら経済、法律学者5人が出席した=写真。
鶴氏は「労働における法と経済」と題して基調講演し、労働問題に対する法学者と経済学者のアプローチの違いに触れたうえで、同WGで提案している「正社員改革」や「労働時間改革」について、なぜこれらの改革が必要かを解説した。これらが個別に議論されると、企業側と労働者側のいずれかが反対するため、議論が進まない現状を踏まえ、「労使が納得できる制度の創設が必要」と述べ、政治的プロセスへの配慮の必要性を強調した。
平野光俊・神戸大大学院教授の「人事と法」をテーマにした講演に続くパネルディスカッションでは、鶴氏と平野氏のほか、大内伸哉・同大学院教授、守島基博・一橋大大学院教授、川口大司・同大学院教授も加えて議論。現在の労働市場が正規と非正規に二極化している問題で、両者の中間にあたる「限定正社員」に対しては、「社員を細分化して公正さをどう維持するか」(大内氏)、「両者のギャップを解消する方法として注目されるが、従来の二重構造が三重構造になる懸念はないか」(川口氏)などの課題を指摘する声もあった。
同WGとして「ジョブ型(限定)正社員」を提言している鶴氏は、「それぞれの労働者の“納得感”がキーワードになる。そのためには、労使関係の再構築が必要なのだが」と述べ、労働政策審議会などの場における従来型の労使の対立構図に懸念をにじませた。
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