帝国データバンクが20日発表した「人手不足に対する企業の意識調査」によると、従業員の過不足感で、正社員が「不足」していると感じている企業が4割近くにのぼっていることがわかった。非正社員の不足感は24%程度にとどまっていることから、正社員数を抑制して非正規社員増でしのいできた企業の人事政策のツケが顕在化した形だ。
調査は昨年12~今年1月、全国2万2884社を対象に実施、1万375社から回答を得た(回答率45%)。
従業員の過不足で、正社員が「適正」と回答した企業の比率は半数の50.3%あったが、36.8%は「不足」と回答。非正規の各66.6%、24.2%に比べると、正社員の不足状態が鮮明になっている。
正社員が不足している業種では建設(59.7%)、人材派遣・紹介(59.4%)、情報サービス(58.2%)、専門サービス(57.6%)など。非正社員では飲食店(53.2%)、人材派遣・紹介(49.0%)、旅館・ホテル(45.5%)など。
建設の不足は東日本大震災からの復興需要、公共事業を伴う景気回復、2020年の東京五輪などが重なり、工事現場などの人員確保が追い付かない状態。人材派遣・紹介は景気回復による外部労働力の需要増により、これまで正社員、派遣スタッフとも減らしてきた業界が一転、人手不足になったとみられる。
ただ、人材確保・定着に向けた政策(複数回答)としては「やりがいのある仕事を任せる」が48.7%、「人事考課の適正性の確保・向上」が33.2%と上位を占め、「成果給を軸とする賃金体系の整備」は28.2%、「賃金水準の引き上げ」も25.5%にとどまり、賃金増には慎重な姿勢が目立った。
帝国データでは「短期的には消費増税後の業績に対する影響、中長期的には成長持続が見通しにくいためではないか」と分析している。ただ、人手不足が長期化すれば賃金上昇の要因になることは間違いなく、多くの企業が人事政策の大幅転換を迫られそうだ。