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2025年2月 1日

大幅賃上げ定着へ、25年春闘スタート

カギを握る中小企業の動向

 2025年の春闘が始まった。物価上昇が続いて国民生活が厳しさを増している中の春闘とあって、大幅な賃上げが継続するかどうかが焦点。賃上げの恩恵を十分受けていない中小企業の動向がカギを握っており、集中回答日の3月11~13日に向けて例年にない注目を集めている。(報道局)

sc250201.jpg 連合の集計では、24年の賃上げ率は5.10%で、1991年以来33年ぶりに5%台を達成した。23年も3.58%の上げ幅。2000年以降の賃上げ率は1.6~2.2%の低い水準で推移してきたが、22年からの物価急上昇などによって賃上げ機運が一気に高まった結果だった=グラフ

 ただ、企業規模によってかなりの開きがある。24年も300人以上の中堅・大企業が5.19%増だったのに対して、300人未満の中小企業は4.45%増と5%に届かず、大企業との差は広がっている。さらに、零細企業になると、賃上げ幅はさらに縮小する。厚生労働省が小規模事業所(常用労働者1~4人規模)を対象にした調査によると、24年7月時点の月例賃金の伸びは2.5%増と過去最高にはなったものの、大手・中堅との差は明白だ。

 これを反映して、勤労者全体の賃金の伸びは物価上昇を容易に上回らず、実質賃金のプラス転換もすんなり進まない。厚労省の毎月勤労統計調査では、昨年は春闘効果によって6、7月とプラス転換したものの、8月から再びマイナスに戻り、11月にまたプラスになるなど、水面を上下している状況だ。

 実質賃金がプラスにならなければ国民生活は向上しない。昨年の賃上げ効果が一部大企業に限定され、中小・零細企業にまで及んでいない実態が浮かび上がっている。企業に雇用されている労働者の約7割は中小企業に勤務しており、この層の実質賃金のプラス転換こそが今年の春闘の最大の焦点とも言ってよい。

 その点は労使ともに同じ認識を持っている。1月22日に行われた十倉雅和経団連会長と芳野友子連合会長の懇談では、「賃上げの流れを定着させなければならない」(十倉会長)、「中小・小規模、地方経済の隅々まで賃上げの波及を」(芳野会長)と意見は一致した。石破首相も2月24日の国会演説で「賃上げこそ成長戦略の要」と述べ、最低賃金の引き上げや企業の省力化投資の支援などを通じた政府の戦略を明確にした。

 連合はすでに今春闘の大目標を「平均5%以上、中小は6%以上」に決定しており、経営側もサントリー、野村証券、ノジマが7%前後の賃上げを表明するなど、前年を超える賃上げ企業が相次ぐ見込みだ。ただ、それが企業全体に波及するかどうかなると、困難な課題も多い。

 中小・零細企業の場合、賃上げの原資がない企業が多い。原材料価格の上昇や人手不足に対応する人件費アップといったコスト上昇の一方で、それを製品価格に十分転嫁できない企業が多いためだ。

不十分な価格転嫁、倒産増も

 帝国データバンクが昨年9月に発表した「価格転嫁調査」によると、昨年7月時点で取引価格の上昇分を転嫁できた企業は半数に満たず、転嫁できた企業でも転嫁率が「2割未満」が3割近くを占めるなど、思うように転嫁が進んでいない実態が明らかになった。特に、消費者に直結するサービス業で十分な転嫁ができず、人材確保のための「防衛的」賃上げを余儀なくされる企業の多いことが推測される。

 また、単に価格転嫁を図るだけでなく、ITツールなどを駆使した生産性の向上も必須で、スーパーや飲食店などではセルフレジによる精算やタブレット端末による注文方式などが急増している。ただ、操作の苦手な高齢者らに対してはやはり人的対応が必要であり、生産性の向上にどこまで寄与しているか、未知数の部分も多い。

 こうした情勢に対応しきれず、市場から撤退する企業も増加中だ。東京商工リサーチによると、24年の企業倒産は1万6件(前年比15.1%増)と3年連続で増え、13年以来の1万件超えとなった。

 件数だけでなく、問題はその中身。例えば負債額でみると、「1億円以上~5億円未満」が2001件と全体の2割を占めたが、「1億円未満」が7478件の7割となっている。原因別では「物価高」関連が698件、求人難、人件費高騰、従業員退職などの「人手不足」関連が289件と大きく増えた。

 こうした事実からわかることは...


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