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2024年12月 7日

アデコの平野健二社長に聞く

働く人のキャリア開発と企業の持続的な成長をサポート

 長時間労働の是正と同一労働同一賃金の実現を掲げる「働き方改革」がスタートして5年が経過。日本の成長の源泉となる雇用労働分野の挑戦は「第2フェーズ」に入り、テレワークや副業・兼業の促進など時代に合った労働法制の見直しが進んでいる。また、労働人口の減少が加速する一方で、近い将来、人工知能(AI)が職場に大きな変革をもたらすと予測されている。こうしたなか、ビジネスパーソンのキャリアアップやリスキリング(学び直し)に注力している世界最大級の総合人材サービス企業・アデコグループで、日本における中核法人のひとつであるアデコ株式会社の平野健二社長に、これからの「働き方」を見据えた取り組みや展望を聞いた。(聞き手:大野博司、撮影:山下裕之)

――アデコが提供するサービスとその特徴は。

sc241208_1.jpg平野 「人財躍動化」を通じて、社会を変える――。当社はこのビジョンのもと、仕事を通じて躍動する人材(「適財」)の輩出と、人材が躍動できる環境(「適所」)を創出し、社会に変革をもたらすことを目指しています。主力事業である人材派遣、アウトソーシング(BPO)、人材紹介・転職支援を強化・拡大するとともに、政府が主導するリスキリング事業に事業者として参画し、デジタル人材の育成と成長産業であるIT分野への労働移行を支援しています。

 また、世界60の国と地域で10万社を超える企業と取引しているグローバルの知見とノウハウを生かした、企業の人材マネジメントや組織変革に関する課題解決のためのコンサルティング(「人財躍動化コンサルティング」)も提供しています。こういった様々な取り組みを通じて、企業の持続的な成長と自治体や官公庁の効率的な業務運営をサポートしています。

 目まぐるしく変化する時代の先を読みながら新たな挑戦を続け、ビジョンの実現に取り組むことで、生産性向上や人手不足の解消といった日本全体の課題解決に貢献していきたいと考えています。

――キャリア開発支援やリスキリングに積極的に取り組んでいる狙いは。

平野 当社の特徴の一つであり、注力している分野でもあります。先ほどお話した「適財」の輩出につながることですが、当社では、先を見通すことが難しい現代において、明確なキャリアビジョンを持ちながら、常にスキル・能力をアップデートしていくことができる人材を育成することが非常に重要であると考えています。

 だからこそ、当社の派遣社員に対して教育プログラムや成長機会を提供するだけでなく、経済産業省が展開しているリスキリング事業に補助事業者として参加し、リスキリングプログラムを提供しています。キャリア開発支援は2016年にスタートした前中計から取り組んできていることであり、豊富なノウハウと知見があります。事務職で働く方をIT人材として育成するなど、時代のニーズにマッチした人材を育成して成長産業に移行できるよう促すというサポートは、人材サービス企業の大きな役割のひとつだと認識しています。

――「地方創生」を重視している意図は。

平野 人財を軸とした地方の活性化を大切にしています。地方では人口減少と働き手不足に悩む自治体が多く、そういった課題の解決をサポートするために当社は地方自治体との「地域連携協定」を広げています。当社がこれまで蓄積してきたノウハウを活かし、自治体業務のDX化を推進したり、地域の人財育成を強化してデジタル化を進めるといった取り組みを同時並行で進めています。

 日本全体の底上げには地方の成長が不可欠であり、当社では「地方創生」を今後注力していく重要施策のひとつと位置付けています。

――生成AIが働き方を変える、と言われている。近い将来、働く現場にもたらす影響をどうみているか。

sc241208_2.jpg平野 Adecco Groupが日本を含む世界9カ国で実施した調査によると、経営層の多くが生成AIを「大きな変革をもたらすゲームチェンジャー」と見ていました。一方で、既存の枠組みを壊すような破壊的イノベーションとして脅威にも感じており、このディスラプション(注)を乗り切る方策を考えているということが明らかになりました。つまり、大いなる期待と不安が交錯している状態です。

 ディスラプションを乗り切るためには、変化に適応できる組織と、そういった組織を作ることができるリーダーの存在が重要です。Adecco Groupは、人材サービスのグローバルリーダーとして、日本を含む全世界でこのような新しい時代に必要なリーダーの育成や組織開発に関するコンサルティングを提供しています。

――具体的な課題とプログラムのポイントは。

平野 経営層がAI時代に対応すべき人財戦略としては、「枠組み作り」「適応型リーダーシップの導入」「社内流動性の促進」「従業員全員に対するAI教育」「人ならではのヒューマンスキルの活用推進」――の5つのポイントがあります。これらを職場で実行するため、「組織の現在地を知る」「会社としての目指したい姿を描く」「経営層のリーダーシップ開発」「組織風土変革」の4つのステップで、リスキリングプログラムを組み立てています。

――これからアデコが打ち出していく方策や展開を聞きたい。

平野 企業だけでなく官公庁や自治体向けのサービスを強化し、日本全体の成長に繋がるような課題解決を支援していきます。また、常に時代のトレンドを把握しながら、求められる人財の育成と輩出に取り組み、そういった人財が躍動できる組織の創出をサポートしていきます。今後特に注力する分野のキーワードを挙げるとすれば、「外国人材の活躍」と「シニアの活用」です。いずれも生産性向上と人手不足解消のために必要不可欠な要素であり、当社としても今まで以上に力を入れていきたいと考えています。

(注)ディスラプション・・・革新的な技術やビジネスモデルが既存の市場や業界を破壊し、創造的な変化をもたらす現象


(了)


平野 健二氏
(ひらの・けんじ)1978年、栃木県出身。2004年、アデコ株式会社入社。営業職を皮切りにマネジメント業務に従事し、支社長やエリア長、事業本部長を経て、18年に執行役員ジェネラル・スタッフィングCOO に就任。22年10月、同社取締役兼 Adecco Chief Operating Officer。派遣事業およびアウトソーシング事業のブランドであるAdeccoの日本における責任者として新規事業の立ち上げ、事務派遣社員のリスキリングの推進、アウトソーシング事業の拡大を指揮。21年、ロンドンビジネススクール 修士課程修了、24年4月に代表取締役社長に就任。

アデコ株式会社 スイスに本社を置き、60の国と地域に約3万4000人の従業員と、5000以上の拠点を擁するAdecco Groupの日本における主な法人のひとつ。人材派遣、人材紹介・転職支援、アウトソーシング、HRコンサルティングなど総合人材サービス事業を展開。加えて、業務改善や人材育成、人材開発、組織開発など、雇用と人事を取り巻くあらゆる課題にソリューションを提供。

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