人材ビジネス会社の2024年9月(第1、2四半期累計)連結中間決算が出そろった。大幅な賃上げや最低賃金の引き上げなどが追い風となって順調に業績を伸ばす企業が相次いだが、人手不足の慢性化がスタッフ確保にも影を落とし、「数量確保」は限界に近付いている模様だ。また、不正経理などの不祥事も相次いでおり、ガバナンス(企業統治)の緩みも目立ってきた。(報道局)
事務系最大手のリクルートHDの場合、国内は人材派遣の需要増が続き、稼働人数が増えたことから7.4%の増収となったが、海外は需要鈍化で1.2%増にとどまった。昨年から米国の労働市場の平準化が進み、「インディード」の求人広告は減少が続いている。通期予想では売上収益の伸びを1.5~3.9%増と幅を持って予想している。
パーソルHDは国内派遣が就業者数、平均請求単価とも上昇したうえ、紹介手数料も増えたことから4.7%の増収と堅調。エンジニアリング領域、人材紹介も二ケタ増となった。後半もこの勢いが続くとみて通期業績予想を上方修正し、売上収益を1兆4550億円(前期比9.6%増)と予想している。
ヒューマンHDは派遣が堅調な一方、教育分野が行政関連の大型案件終了により、売上高の伸びがやや鈍化。理学系研究職派遣のWDBHDは順調に売上高を伸ばしたが、派遣社員の待遇改善に努めていることから減益に。通期でも増収減益を予定している。
技術・製造系は人材の争奪戦が激化している。メイテックグループHDはエンジニア数を1年前からわずかに減らしたが、稼働率の上昇などでしのいだ。ただ、ミドルゾーンの採用市場が特に厳しくなっていることから、通期は期初予想から売上高で2億円、営業利益で1億円程度下方修正した。
NISSOHDは請求単価のアップやエンジニア数の増加で売り上げを堅調に伸ばしており、UTグループもM&Aやエンジニア数増で好調。こうした中、nmsHDは「一部役員の不適切な経費使用」で混迷し、中間決算の発表を来年1月に延期する事態となっている。
テクノプロHD(6月期決算)は7~9月期の売上収益が578億円(同9.4%増)と堅調。国内技術者が約2万6000人と1年前より2000人近く増え、稼働率も95.1%に上昇中。ワールドインテックを擁するワールドHD(12月期決算)も1~9月期が1715億円(同13.6%増)と二ケタ増が続いている。一方、アウトソーシング(12月期決算)は不適切会計や雇用調整助成金の不正受給などによるガバナンス欠如が表面化したことから、投資企業のベインキャピタルと組んでMBO(経営者による自社株買収)を実施し、今年6月に上場廃止した。
転職者増も、求人広告は減少傾向
求人メディア・人材紹介では、ディップが平均時給の高い人材紹介が好調で堅調な売上高を維持しているが、求人広告の伸びは鈍化がみられることから、通期も7%増の576億円を見込んでいる。エン・ジャパンは国内求人サイトの広告減で減収となったが、広告宣伝費を減らして増益に。通期の売上高は8%増の730億円程度を見込んでいる。
同業界ではスポットワークの需要が広がり、専門仲介企業も業績を伸ばしているものの、「闇バイト」に悪用される事例も出てきていることから、各社とも事前防止策に追われている。厚生労働省はこれまで、紹介企業自身の「自主点検チェックリスト」を通じて、不当な求人内容かどうか自主チェックを要請しているが、今後、チェック内容をさらに厳しくすることも考えられ、業界の試行錯誤が続く模様だ。
関連統計をみると、人材市場にも人手不足が影を落としている。日本人材派遣協会によると、24年第1四半期(1~3月)の派遣社員実稼働数は約42.5万人(前年同期比3.2%増)、第2四半期(4~6月)も42.2万人(同3.3%増)と微減傾向にあり、...
※こちらの記事の全文は、有料会員限定の配信とさせていただいております。有料会員への入会をご検討の方は、右上の「会員限定メールサービス(triangle)」のバナーをクリックしていただき、まずはサンプルをご請求ください。「triangle」は法人向けのサービスです。
【関連記事】
売上収益9.6%増、大幅増収増益
パーソルHDの9月中間連結決算(11月11日)