2024年の最低賃金(最賃)が全都道府県で確定した。10月から順次実施されるが、2年続けての大幅引き上げ額から見えて来るのは、地方企業の人手不足の窮状だ。今回、中央最低賃金審議会が示した引き上げの目安額は「平均50円(5.0%)」。地域の経済状態に応じてA~Cの3ランクに分けて示されるが、今回は一律の金額だった。これに対して、各都道府県の審議会が出した結論は目安を上回る「平均51円(5.1%)」の過去最高で、昨年の1004円から1055円になった=グラフ。(報道局)
今回、27県が目安額を上回る引き上げを決めた。中でも徳島県は目安額の50円を34円も上回る突出した額で、岩手県と愛媛県が9円、島根県が8円、鳥取県が7円とそれぞれ上回った。徳島、愛媛、島根県はB、岩手、鳥取県はCランクで、27県のうちCランクが全13県、Bランクが14県という内訳=表。引き上げ後に1000円の大台を超えるのは8県に上り、これで合計16都道府県となった。
昨年も24県が目安以上の引き上げを行い、Cランクが12県、Bランクが11県だった。Aランクで目安以上に引き上げたのは千葉県だけで、今年はAランクの都道府県がすべて目安通りだったため、地域格差は2年続けて縮小したことになる。
目安額を上回る県が2年続けて続出した理由は、地方における深刻な人手不足だ。その一端を示すのが、厚生労働省の都道府県別の有効求人倍率。最新の7月の全国平均倍率は1.24倍だったが、Cランク地域に限っても、岩手県は1.30倍、秋田県は1.41倍、山形県は1.46倍、鳥取県は1.44倍、大分県は1.50倍など、軒並み平均を大きく上回っている。この傾向が1年以上続いており、企業側の求人に対して求職者の不足が際立っていることがわかる。
新型コロナ以降の景気回復に伴い、求職者側は賃金面の好条件を求める傾向が強まっており、非正規労働者に顕著だ。これを反映して、ディップの全国アルバイト時給調査では7月が平均1364円、エン・ジャパンの派遣時給調査でも7月は平均1702円と最賃の水準を大きく上回る相場を形成しており、最賃レベルの動きでは人材を確保できる状況ではないことを示唆している。
また、交通網の発達などにより、都道府県をまたいだ就労者も多く、最賃の低い地域から高い地域に人材が容易に流れがちな傾向も強まっていることから、「近隣の県より高い水準を」という競争が激化している点も見逃せない。その意味では、「都道府県単位の最賃の決め方は時代遅れ」との指摘もあり、今後に課題を残している。
10月から新しい最賃が実施された場合、...
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