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2024年8月12日

実質賃金、27カ月ぶりプラス転換も

続かなければ無意味、「好循環」は遠く

 毎月勤労統計の6月速報値(従業員5人以上)で、給与額から物価上昇分を差し引いた実質賃金が27カ月ぶりのプラスとなった。2年3カ月という長期間、賃金の伸びが物価の伸びを下回るという"異常事態"が続き、政府は「賃金と物価の好循環」を最大課題に掲げてきたが、ようやく水面に頭が出た状態だ。しかし、これが7月分以降も続くかどうかは予断を許さず、官民とも関連指標の動きを注視している。(報道局)

sc240812.png 6月の現金給与総額は49万8884円(前年同月比4.5%増)で30カ月連続のプラス。さらに、実質賃金指数(20年=100)も143.0(同1.1%増)となり、2022年3月以来のプラスで過去最長のマイナスを脱した=グラフ。しかし、問題はプラス転換の実態だ。給与額のうち、基本給にあたる所定内給与は26万4859円(同2.3%増)、加えてボーナスにあたる特別給与が21万4542円(同7.6%増)と大きく伸びた。所定内給与には春闘で妥結した月例賃金の上昇分が含まれており、2.3%という伸びは実に約30年ぶりの高さだ。

 所定内給与の伸びは、今春闘で5.10%増(連合調べ)という大幅賃上げが実現し、それが大企業から中小企業に浸透した結果とみることができる。しかし、6月は消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く)も3.3%上昇しており、所定内給与に残業代を加えた「決まって支給する給与」の伸びはマイナス1.0%と、依然としてマイナスのままだ。ただ、マイナス幅は今年になって確実に縮小しており、従業員30人以上の企業に限ればマイナス0.1%とあと少しでプラス転換しそうな状況だ。

 6月の場合、プラス転換の最大要因はボーナスの高い伸びにある。ボーナスは企業業績や経営戦略などによって支給額や支給時期が異なる場合が多く、6月だけでなく7月、8月支給分も合わせて判断しないと、プラス転換が本物かどうか疑わしい。というのも、6月支給の企業は春闘の時点ですでに支給額や時期などが決まっている大手企業が多く、中小企業の多くは支給が7月以降になるため。帝国データバンクの調査では、夏ボーナスを支給する企業の金額の伸び率は大手の4.1%増に対して、中小企業は1.7%増とかなり開きがある。こうしたことから、7月の「特別給与」が6月の7.6%増並みの水準になるかどうかは微妙なところで、ボーナスの影響が小さくなる秋口に入ってからの動きが注目される。

最賃、円高などの好材料も

 一方で、好材料がないわけではない。一つは10月から実施される最低賃金(最賃)の大幅アップ。パート・アルバイト従業員の2~3割ほどは最賃水準で働いているとみられ、こうした層が最賃アップの恩恵を受ければ、労働者全体の賃金を底上げする力になる。慢性的な人手不足を反映して、パート、アルバイト、派遣など非正規労働者の賃金は正規労働者以上の上昇が続いているが、職種などによって賃金のバラつきもかなりあり、低水準の職種では最賃アップが大きな所得支援になる。

 もう一つは、日銀の利上げに伴う円高の流れだ。これまでの...


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