スペシャルコンテンツ記事一覧へ

2024年8月 5日

「就職お祝い金」禁止の実効性確保に動く厚労省、その背景と視点

「人と仕事を結びつける雇用仲介事業者」の共通ルール

 雇用仲介事業者が求職者に金品を提供して転職を促す行為を防止する、いわゆる「就職お祝い金」の禁止規定。職業安定法の指針に記されているが、この実効性確保に向けて厚生労働省は追加的対応に乗り出す。転職勧奨禁止を職業紹介事業の許可条件に加えたり、募集情報等提供事業(求人メディア)も新たに禁止規定の対象とするなど、法令順守徹底のためのルールを強化する方針だ。一方で、「金品提供によって需給調整機能を歪める行為を防ぐ」という追加的対応の趣旨に照らして、募集情報等提供事業には禁止規定に該当しないケースも明確にした格好。今回の措置が必要となった背景や対応策の中身を検証する。(報道局)

 2017年の改正職安法に基づく指針には「適正な宣伝広告等に関する事項」があり、「求職の申し込みの勧奨にあたっては、職業紹介事業者が求職者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくない」と記されている。しかし、「好ましくない」では改善されず、2021年4月の指針見直しで「職業紹介事業者が『お祝い金』、その他これに類する名目で求職者に社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供し、求職の申し込みを勧奨してはならない」と書き加えて明確に禁止した。それでも、人材難が顕著な医療・介護・保育を営む事業者などから雇用仲介事業者の金品提供による転職勧奨の指摘が止まないため、今回の対応でもう一段"法的拘束力"を上げる。

 一連の経過と現状を踏まえ、厚労省はどのような視点に立って追加的対応を検討したのか。まず、「人と仕事を結びつける雇用仲介を営む以上、共通して順守すべき基本ルールがある」ことを大前提に、現在、雇用仲介事業者に課している「ルール」を整理した。また、禁止規定が指し示す範囲が事業者のサービスの全プロセスを網羅していることを念押し。さらに、金品提供が「好ましくない」ことを基本線としつつ、「社会通念上相当と認められる程度」について、「それを超えるか否かは額や誘因効果など労働市場に与える影響を総合的に判断する」との考えに立っている。

 厚労省が整理した現状の「共通ルール」は(1)求人に関する情報の的確表示(2)個人情報の取り扱い(3)苦情処理(4)事業報告書の作成・提出――の4点。「違いがあるルール」としては、職業紹介事業が許可制で、募集情報等提供事業が届け出制であるほか、(1)帳簿書類の作成・備え付け(2)業務責任者の選任(3)求職者への金銭提供の禁止(4)サービス料金の明示――の4点を職業紹介事業だけに課している。

都道府県労働局に寄せられた「就職お祝い金」を巡る苦情・相談

sc240805.png 厚生労働省は、7月24日に開かれた労働政策審議会労働力需給制度部会に追加的対応策を提示した際、募集情報等提供事業者による「就職お祝い金」の提供事例を公表=写真。昨年2月から今年6月までに都道府県労働局に寄せられた相談・苦情で、「求人サイトが応募者を集めるために『お友達紹介キャンペーン』と称して金品を提供している。紹介事業者が同じことをすれば『就職お祝い金』禁止に抵触すると思うが、なぜ募集情報等提供事業者には取り締まりが及ばないのか」「募集サイトを通じてスタッフを1名採用したが、採用後約2カ月後に退職した。同サイトは就職してから2カ月後に採用者に『就職お祝い金』を支給しているが、同サイトに支払った手数料は返金してもらえないのか」など、25件の具体的な事例が報告された。

 公労使委員からは...

※こちらの記事の全文は、有料会員限定の配信とさせていただいております。有料会員への入会をご検討の方は、右上の「会員限定メールサービス(triangle)」のバナーをクリックしていただき、まずはサンプルをご請求ください。「triangle」は法人向けのサービスです。

【関連記事】
「就職お祝い金」禁止の実効性確保狙い新たな対応策、厚労省
募集情報等提供事業者も規制対象へ、労政審需給部会に提示(7月24日)

就職「お祝い金」禁止などの実効性確保策を議論、自民議連
厚労省、今月下旬にも具体策提示へ(7月2日)

PAGETOP