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2024年7月29日

最賃決着、政策総動員が必須条件

「大幅アップ」だけでは効果限定

sc240729_2.png 今年の最低賃金(最賃)の目安はA~C3地域とも同じ50円アップの1054円(全国加重平均)で決着した。これを受けて、都道府県ごとの審議会で議論し、8月中にはアップ額が出そろい、10月から順次実施の予定だ。ただ、政府が描く「賃金と物価の好循環」に近付くかどうかは不透明だ。(報道局)

 今回の「50円、5.0%アップ」は昨年の「43円、4.5%」をさらに上回る過去最高で、10年前の780円からは274円上昇。コロナ下の20年当時の据え置きを除けば、毎年、3%ペースで上げ続けてきたことになる。この3%基調を2年連続でさらに上回った背景には、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格の急騰とそれに連動した本格的な物価上昇が続いているためだ。デフレ脱却には、賃金上昇が物価上昇を上回る「緩やかなインフレ」状態に導き、個人消費を活性化しなければ実現はむずかしい。

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大詰めの中央最低賃金審議会の目安小委員会に臨む
労働者側委員(2024年7月24日・厚労省)

 しかし、現実は逆だ。厚生労働省の毎月勤労統計調査を見る限り、労働者の名目賃金はわずかながらプラスが続いているものの、物価上昇分を差し引いた実質賃金は今年5月で実に26カ月連続のマイナスで、物価上昇に賃金アップが追い付いていない状態が2年以上続いている。6月の結果で「反転」を狙う政府だが、瞬間的に達成したとしても消費者は生活防衛に追われるため、本格的な消費回復は容易でない。

 このため、政府と連合などの労働界は大幅な賃金アップに注力。連合によると、春闘で獲得した賃上げ額は昨年が1万560円(前年比3.6%増)、今年が1万5281円(同5.1%増)と2年連続の大幅賃上げを勝ち取った。賃金上昇を引っ張るベースアップ(ベア)に対して、最賃は賃金上昇を底支えする役割を担う。政府、労働界とも春闘に続いて最賃でも大幅アップを狙って成功した形だ。

 ただ、最賃自体が全体の賃金アップに及ぼす影響は、それほど大きくはないとみられる。厚労省によると、最賃改定前に最賃を下回る賃金で働いている労働者の比率(未満率)は23年度でわずか1.9%、最賃改定後に改定後の賃金を下回る賃金で働く労働者の比率(影響率)は21.6%だった。未満率は毎年、ほぼ2%弱で推移。影響率は年によって波があるが、ほぼ10%台で推移してきた。23年度は最賃の大幅アップによって影響率が20%台にハネ上がり、今年も大幅アップだったため、同様な傾向をたどると予想されるが、いずれにしても、最賃アップによって直接的な恩恵を受ける層はベアに比べればそれほど多くはない。賃金水準の低い中小・零細企業の従業員、サービス現場のパート・アルバイトなどの非正規従業員といった層がメーンになるとみられる。

 最賃の大幅アップをより効果的なものにするには、中小・零細を中心にした企業側の経営効率アップと、人件費の上昇分を取引価格に十分転嫁できる体制が不可欠。その意味で、対応できない企業には退場してもらい、代わって付加価値の高い製品・サービスを生み出す新興企業の勃興が大きな焦点になる。

 働く側も、最賃周辺の労働者は女性の非正規が多く、賃金が上がってもいわゆる「年収の壁」に阻まれて、恩恵を十分受けられない人も少なくない。政府が進めている税・社会保険制度の改革をさらに強力に進めないと効果は削がれる。

問われる政府の政策実行力

 中央最低賃金審議会が7月25日に出した目安答申の中でも、生産性向上の支援や構造的な価格転嫁実現のための独占禁止法の施行強化、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用促進などを政府に要望している。要は、金額だけ上げても効果は薄く、これらの政策の組み合わせ(ポリシー・ミックス)が必要という趣旨だ。

 これに対して、...


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