25年春入社の大学生らの就職活動は、すでにヤマ場を越えたようだ。6月1日の企業による採用選考の解禁からわずか1カ月後に、内定率が軒並み80%を超えたからだ。ここで就活を終える学生も年々増えており、内定先を早く決めて残る時間を充実した学生生活に充てようとする意図もうかがえる。同時に、就活ルールの形骸化も一層進んでおり、「新卒一括採用」が時代遅れになっていることは明白だ。(報道局)
キャリタス(旧ディスコ)によると、7月1日時点の大卒内定率は89.7%(前年同期比3.7ポイント増)と9割近くに達した。就活終了者も79.7%(同5.4ポイント増)に増え、就活継続は2割程度にとどまる。新型コロナ以降、内定率は上昇し続けており、人手不足に悩む企業側の焦りが透けて見える。
他社の調査もほぼ同じ。リクルートによると7月1日時点の内定率は88.0%(同4.8ポイント増)で、進路確定率は75.0%(同5.3ポイント増)。マイナビの調査でも6月末時点の内々定率は81.7%(同2.2ポイント増)となり、17年卒以降で6月末時点の8割超えは初めてという。
内定率の上昇に合わせて就活を終える学生が増えているのは、まずは卒業後の進路を押さえておき、卒業までの期間を卒論や部活などに充てて学生生活を満喫したいという傾向の表れ。インターンシップへの参加者が年々増えているのも、早期内定の大きな要因となっているようだ。
政府が示しているガイドラインでは、「3月から企業の広報活動開始」、「6月から採用選考活動の解禁」、「10月から内定決定」となっているが、すっかり形骸化している。慢性的な人手不足に対応するため、企業側が新卒人材の確保に前のめりになっており、「新卒一括採用」という企業側の都合で続いてきたルールが、人手不足への対応というこれまた企業側の都合で形骸化するという皮肉な現象が生まれているのだ。
長期的にみれば、新卒人材はこれ以上増えないと予想され、企業側の求人数に対して、学生側の求職者数は大きく乖離している。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率」調査によると、新型コロナで落ち込んだ22年卒当時、企業側の求人数約67.6万人に対して、就職希望者は約45万人、求人倍率は1.50倍だった。
その後、景気回復に伴って求人数は増え続け、25年卒では79.7万人と22年比で18%伸びたのに比べ、25年卒の就職希望者数は45.5万人で同1%程度しか伸びていない。少子化で学生数自体が伸びていないのに対して、企業側は昔ながらの定年制に固執したまま「人材獲得」に熱中し、人口減少社会に対応した長期展望を明確に持ち合わせていないことが背景にある。
初任給アップなど、あの手この手の対応策
それでも、学生に目を向けてもらうため、企業側も多大な努力を惜しまない。手っ取り早いのが給料のアップだ。マイナビによると、25年卒者向けの初任給を「上げる」企業は84.4%(前年比14.4ポイント増)と大幅に増え、上げ幅も前年に最も多かった「5000円~1万円未満」の36.0%から、25年は「1万~2万円未満」が35.9%の最多となった。「1万~2万円未満」は上場企業に限れば42.8%に上り、非上場企業の35.3%をかなり上回っていることから、企業規模による賃金格差がさらに拡大しそうな情勢だ。
また、給与以外にも、入社前に本人の希望に沿った配属先や勤務地を通知する手法を導入。事前に転勤の可否を聞いておき、消極的な学生にはそれなりの配属先を用意したり、「内定者インターン」を通じて仕事への理解を深めてもらうなど、ひと昔前までは考えられなかった手厚い対策を講じている企業が増えつつある。
というのも、若手社員の早期退職がそれほど珍しいことではなくっているからだ。キャリタスが3月に発表した「入社1年目社員のキャリア満足度調査」によると、...
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