景気回復の主役になるはずの個人消費が、長期低迷から抜け出せない状況が続いている。デフレ脱却には個人消費の回復が不可欠だが、長年続いた賃金の伸び悩みに加え、2022年から始まった物価上昇に、家庭の「生活防衛」意識が強まっているためだ。大幅賃上げが実現した今年が消費回復のきっかけになるかどうか、先行きはまだ不透明だ。(報道局)
個人消費の弱さが鮮明になっている。今年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は前期比マイナス0.7%、年率換算マイナス2.9%のマイナス成長となった。元日に発生した能登半島地震の影響という一時的要因が大きかったが、GDPの半数以上を占める個人消費に限れば、一時的要因とは言えない。
1~3月期の実質個人消費は前期比マイナス0.7%で、4四半期連続のマイナス。2009年1~3月期以来の"異変"だが、当時はリーマン・ショックが起きたのに対して、今回はその種の大事件は起きていない。にもかかわらず、これだけ長期間の低迷が続くのは、物価高騰が主要因としか考えられない。
総務省が毎月公表している「家計調査報告」でも、それが鮮明に表れている。22年春、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、エネルギーなどの輸入物価の高騰が始まり、消費者物価(生鮮品を除く総合)はそれまでの0%前後から2~3%台に急騰したまま、現在も2%台で推移している。
家計はこれに敏感に反応し、22年から2人以上世帯の月々の消費支出額は27万~28万円台のほぼ横ばいで推移したまま。このため、23年以降の伸び率は急速に低下し、物価上昇分を差し引いた実質伸び率は2~5%のマイナスが続いている。今年4月に0.5%増と14カ月ぶりのプラスとなったものの、5月には再び1.8%減に戻ってしまった=グラフ。
家計防衛の主力は「食品」にある。帝国データバンクが定点観測している「食品主要195社」の価格改定動向調査では、22年に累計で2万5768品目が値上げされ、平均値上げ率は14%。23年はさらに増えて3万2396品目、平均15%が値上げされた。今年は11月予想分を含めて1万86品目にとどまっているものの、値上げ率は17%に上昇している(6月公表時点)。
食品も酒も上がる一方
値上げ品目の中心は加工食品、酒類・飲料、調味料などの日常食品ばかり。同社によると、今年は2年前より円安が進んでいることもあり、コストプッシュ型の値上げが再燃。今秋には再び値上げラッシュが出現する懸念が強いという。多くの家庭にとって、2年以上に及ぶ食品の値上げラッシュは節約志向を強める結果となり、これが実質消費のマイナスを招いているのは明らかだ。
家計調査でも「食料」は支出全体の30%弱を占める最大項目だけに、節約したくても容易でない家庭が多い。家具・家事用品や教養娯楽費など、節約しやすい支出は二ケタ減の月も多いが、食品にはそれほどの波はなく、実質2~4%程度のマイナス幅で推移している。一部に国内旅行などのレジャー・観光需要が伸びてはいるものの、外国人観光客によるインバウンド需要に比べると影が薄く、「とにかく、今は我慢」というのが実情に近い。
「収入増」の見通しが立たないと......
それでも、値上げ以上に収入が増えていれば、国民の消費マインドが冷えることはない。ところが、厚労省の毎月勤労統計調査によると、...
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