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2024年7月 1日

注目の24年度最低賃金、審議開始

2年連続の大幅アップなるか

 2024年度の最低賃金を決める中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の議論が6月25日に始まった。国民の実質賃金が2年以上にわたってマイナスを続ける中、昨年度の「43円、4.5%」をさらに上回る引き上げが実現するかが最大の焦点だ。(報道局)

sc240701.png 最低賃金(最賃)は同審議会傘下の「目安小委員会」(藤村博之委員長)で非公開審議され、7月下旬に改定の「目安額」を提示。目安額は賃金水準の高い順にA(東京都など6都府県)、B(兵庫県など28道府県)、C(大分県など13県)の3ランクに分かれ、それぞれの目安を示す。これを軸に各都道府県の最賃審議会が8月中に決定し、10月から実施される日程だ。

 23年度の場合、目安委が平均で「41円(4.3%)アップの1002円」を示したところ、結果は「43円(4.5%)アップの1004円」に上振れした。賃金水準が低く、労働力流出の加速化を懸念するCランクの県が軒並み、目安以上の大幅改定に踏み切ったためだ。

 しかし、この大幅アップも労働者全体の賃金底上げにはそれほど寄与しなかったようだ。厚労省の毎月勤労統計調査では、最賃が実施された昨年10月以降の現金給与総額の伸びは0.7~1.5%程度の低率が続き、消費者物価の伸びを差し引いた実質賃金もマイナス1.1~2.5%で推移。実質賃金のマイナスは今年4月で実に2年以上の25カ月連続となり、これが個人消費の回復を阻む大きな壁となっているのが現実。最賃アップの効果はどこにも見られない。

 こうした状況を意識して武見敬三厚労相は今回、中央審に対して「物価を上回る賃上げを実現しなければならない」と述べ、目安額の大幅アップを打ち出すよう、暗に求めた。今年の春闘では平均1万5236円、賃上げ率5.1%(連合調査、6月3日時点)と33年ぶりの大幅アップが実現した。最賃もこのアップ率に歩調を合わせると50円程度になることから、「50円アップが労使の攻防ライン」との見方が広がっている。

 ただ、体力の弱い中小・零細企業には慎重な姿勢も根強い。日本商工会議所は4月、政府に最賃に関する要望を出したが、その中で「中小・小規模企業は労働分配率が7~8割と高いことに加え、エネルギーや人件費などコスト増加分の価格転嫁が十分進まず、賃上げ原資は乏しい」として、「生産性向上などの自己変革による付加価値の増大に加え、労務費を含む価格転嫁の推進により、賃上げ原資を確保していく必要がある」と述べ、政府にそれらの支援策を強く訴えた。

 また、地域間格差の問題も見逃せない。最も高い東京都と最も低い岩手県などとの間の最賃格差はこの10年間、23~24%の幅で推移しており、23年度は東京都の1113円に対して、最低の岩手県は893円と19.8%まで縮小した。それでも2割近い格差が残り、転職活動の活発化によって賃金の高い東京などの都市部に人材が流れる懸念が強まっている。Cランク企業は人口減が加速している東北や九州に多いため、貴重な労働力をどうやってつなぎとめるか、頭の痛い課題がつきまとう。

実質賃金のプラス転換には寄与しない?

 最賃の大幅アップだけで給与がプラス転換するかどうかは、極めて不透明だ。その理由の一つに、最賃アップを迫られる企業はそれほど多くない点がある。厚労省によると、23年度の場合、未満率(最賃改定前に最賃を下回っていた労働者の割合)はわずか1.9%で、影響率(最賃改定後に最賃を下回る労働者の割合)も21.6%に過ぎない。

 23年度は大幅な引き上げだったため、影響率は過去10年で最も高くなったものの、多くの企業が引き上げに努めたことから、労働基準監督署などが今年1~3月に調べた結果、最賃に満たない労働者比率はわずか2.3%で、3%台が多かったそれ以前に比べるとかなり低くなった。

 もともと、最賃以上の給与水準にある多くの企業にとって...


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