職業紹介事業者が求職者に金品提供を持ち掛けて転職を勧め、繰り返し手数料収入を得る行為を是正する――。2021年4月に職業安定法の指針(ガイドライン)として施行された、いわゆる就職「お祝い金」禁止規定の狙いだ。特に、人手不足が顕著な医療・介護・保育分野で横行しているとの指摘がいまだに絶えない。この状況を踏まえて厚生労働省は5月29日、転職勧奨禁止の実効性確保を目的に、労働政策審議会労働力需給制度部会に「追加的対応」の方向性を示した=写真。具体策は今後の同部会で検討するが、禁止規定の法令"格上げ"や類似の苦情が挙がっている募集情報等提供事業者(求人メディア)に拡大することも視野に入れている。(報道局)
「金品をぶら下げて、不要な転職を短い期間に繰り返す悪質事業者を排除しろ」「紹介手数料が高すぎる」――などの指摘は兼ねてからあった。振り返ると、2017年改正の職安法第48条に基づく指針の中に「適正な宣伝広告等に関する事項」があり、「求職の申し込みの勧奨にあたっては、職業紹介事業者が求職者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくない」と記されていた。しかし、「好ましくない」では歯止めにならず、2021年4月の指針見直しで「職業紹介事業者が『お祝い金』、その他これに類する名目で求職者に社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することにより、求職の申し込みの勧奨を行ってはならない」と明確に禁止した。この際の「社会通念上」とは個別のケースごとに判断されるが、概ね「交通費の実費相当」と理解されている。
この3年前の見直しの際に厚労省は、「金品提供による転職勧奨は労働市場における需給調整機能を歪め、労働者の雇用の安定を阻害する」と指摘。「求職の申し込みの勧奨は、紹介事業の質を向上させ、それをPRすることで実施してほしい」と注意喚起した。労政審需給部会の議論の過程では、既に「求人メディアにも類似のケースがみられるのではないか」といった意見があったが、この時は紹介事業者への規定に留めた経緯がある。
さて、人手不足にあえぐ企業や施設から聞かれる悪質事業者への苦情はもっともだが、一方で「短期間であっさり転職されてしまう求人側の雇用環境や待遇面はどうなんだ」といった声もある。求人側の注文に寄り過ぎた規制は市場原理に反するなど現場に悪影響を及ぼす懸念もあり、今回の「追加的対応」の着地点は現場実態に照らした「妥当な線」が求められる。この動きの背景には...
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