主要人材ビジネス企業の2024年3月期(23年度)決算がほぼ出そろった。昨年に続き、コロナ後の景気回復の波が業界にも浸透した結果、増収増益にこぎつける企業が多かった。ただ、人手不足を背景に、優秀人材獲得の激化や派遣社員の質向上など、「量から質」への競争はさらに強まりそうな情勢だ。(報道局)
最大手のリクルートホールディングス(HD)は国内の人材派遣、人材紹介、旅行・美容予約サイトなどは堅調だったものの、米国労働市場の減速を受けた求人検索サイト「インディード」の失速などにより、売上高(売上収益)は微減。ただ、人件費や広告宣伝費の抑制などにより、当期純利益が3536億円の過去最高を記録するなど、体質の強さを見せつけた。
パーソルHDも人材派遣が堅調で、直近の就業派遣スタッフは前年比3%増の約12万5000人に伸び、請求単価も3%増を達成。人材紹介も企業の活発な中途採用によって売上収益は2年連続の二ケタ増となり、海外事業もコロナ禍の影響を脱してプラスとなった。
ヒューマンHDは派遣稼働スタッフが1.6%伸び、契約単価も3.9%増を達成。教育面でもキャリアコンサルタント講座の在籍者が2.1倍に増えるなど堅調に推移した結果、売上高、利益とも過去最高となった。理学系派遣のWDBHDは企業、大学、研究機関などの派遣需要の高まりにより、売上高は10年連続の増収と専門特化の強みを維持している。
日本経済は労働力不足が顕在化しており、企業の人材需要は高まる一方、人手不足が慢性化している。総務省の労働力調査によると、23年度は前半こそ正社員数が3600万人を超えていたが、後半になると3600万人を上下している。非正規は、パート労働者が年度当初の1000万人前後から年度末には1038万人に増え、派遣の場合も150万人前後から年度末は160万人に増えた。しかし、これ以上増える余地は少ない。
日本人材派遣協会の「労働者派遣事業統計調査」でも、23年10〜12月期の実稼働者数は約42万人で、1年前より3.3%増えた。しかし、伸び率は22年10〜12月期の8.9%をピークに毎四半期ごと下がり続けており、これ以上の伸びは期待できそうになく、現有のスキルアップなどを通じた付加価値の向上がカギになる。
技術者需要高まり、製造・請負系は好調維持
事務系だけでなく、エンジニア、製造派遣・請負系でも業績は好調だ。「正社員技術者」のメイテックグループHDの売上高は6.6%増の過去最高に。期末のエンジニア数はメイテックが7870人、メイテックフィルダーズも4388人と前年度を大きく上回ったが、新卒エンジニアの採用は計画未達で、他社との争奪戦が課題となっている。
NISSOHD(旧日総工産)は...
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