7年ぶりに支持政党の代表を招いた芳野会長と泉・立憲
代表(右)、玉木・国民代表=4月27日・代々木公園
東京・代々木公園で4月27日に開かれた連合の第95回メーデー中央大会には、2万8800人(主催者発表)が集結。1991年以来、33年ぶりに春闘の賃上げ率5%台を維持(4月16日現在)しているとあって、安堵感と高揚感に包まれていた。ステージ上には、連合の芳野友子会長をはじめ、招待を受けた政府代表の岸田文雄首相、労働行政代表の武見敬三厚労相、大会を後援する東京都の小池百合子知事のほか、連合の支持政党である立憲民主の泉健太代表と国民民主の玉木雄一郎代表が登壇。それぞれの立場から「持続的な賃上げの必要性」を強調した。(報道局)
この10年のメーデー中央大会を振り返ると、2014年には安倍晋三首相をはじめ、与野党9政党(当時)の代表が登壇した。「挨拶の時間が長すぎる」という参加者からの指摘もあって、翌15年からは運営と進行上の観点から労働行政代表(厚労相)と連合の支持政党である野党の民主党(当時)、東京都代表のみを招待。野党の招待はその後、民主党から"衣替え"した民進党になり、17年の蓮舫代表(当時)を最後に"休止"となっていた。今年は、7年ぶりに支持政党である2つの党代表を招いた格好。登壇者のそれぞれの主張や狙い、思惑が交錯した6氏の挨拶の中から、主な発言を記録する。
芳野会長「30年間の停滞を一掃する高い賃上げ」
2024春季生活闘争は、これまでの30年間の停滞を一掃するように大企業から中小企業にわたって高い賃上げが実現している。一方で、賃上げは大手企業の話であって中小企業には無理、という声が少なからず聞こえてくる。日本の99.7%は中小企業で、働く人の7割はその中小企業で働いており、中小企業で働く方々の給料を上げていかなければ「みんなで賃上げ」とは言えない。
今年は地方版「政労使会議」が全ての都道府県で開催された。労務費を含む価格転嫁により、中小・小規模事業所での賃上げを実現するための心合わせができた。これからは「労務費を含む適切な価格転嫁」という当たり前の商習慣を根づかせていかなければならない。私たち生活者も、商品やサービスの裏側にいる大勢の労働者を思い浮かべて、安ければ良いではなく良いものには値がつくことをきちんと受け入れていこう。
また、日本では政治への分厚い無関心層が横たわっていると言われている。裏金とか負担増とか、日々の生活を豊かにすることからかけ離れていることが、政治に共感できない理由ではないか。政治家の皆さんは、どうか私たちに政治を諦めさせないでください。そして私たちも、社会を支える当事者として政治を自分事として諦めない努力をしていきましょう。
岸田首相「物価上昇を上回る所得を必ず実現」
岸田政権では経済、経済、経済と申し上げているが、長年にわたって染みついたデフレ心理を払拭し、賃金が上がることが当たり前との方向に社会全体の意識を一気呵成に変えなければならない。こうした思いで一歩も二歩も踏み込んだ政策を進めている。今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現する。そして、来年以降に物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる。まず、今年の春季労使交渉において昨年を大きく上回る力強い賃上げの流れができていることは大変心強く思う。
さらに来年以降持続的な賃上げ定着の鍵を握るのは、中小企業、そして地方だ。労務費の価格転嫁を通じた賃上げを進めるため、独占禁止法と下請け法に違反する事案に対して厳正に対処するとともに、いわゆる「買い叩き」による下請け事業者の経営の圧迫を防ぐため、下請け法の運用基準の改正に取り組む。
また、男女間の賃金格差の是正や21万人が活用する予定の「年収の壁」対策をさらに広げるとともに、被用者保険の適用拡大など年金制度改革に向けて精力的に検討を進める。
このほか、最低賃金引き上げ目標をできる限り早期に達成すべく、環境整備を加速していく。もう一つの大きな課題である少子化に対しては、2030年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスであるとの認識に立ち、約3.6兆円におよぶ前例のない規模で子育て支援を強化する。
武見厚労相「『三位一体の労働市場改革』を着実に実施」
今年の春闘は、労使の真摯な交渉の結果、昨年を大きく上回る水準で賃上げの力強い動きが広がっている。この賃上げの勢いを中小企業や正規雇用や非正規雇用労働者の皆さんにも幅広く波及させることが重要だ。
現在の我が国は人口減少の下で様々な産業で人手不足の状況が生じている。このような社会において、デジタル化による成長産業の人材育成や生産性向上が必要となっており、わが国で活躍する外国人との共生社会をつくっていくことも大切だ。そして、リスキリングや円滑な労働移動を進める取り組みなど「三位一体の労働市場改革」を着実に実施しなければならない。
女性や高齢者、障害のある人たちを含め、多様な人たちが希望に応じて活躍できる社会を構築することで、人口減少のなかで人材確保という難問に対応していくべきではないかと考えている。
小池都知事「カスタマーハラスメントで都独自の条例」
連合からは働く現場の実情を踏まえた貴重な提言を頂き、感謝している。例えば待ったなしの課題である「カスタマーハラスメント」。その防止のため、連合東京の協力も得ながら専門家を交えた議論を重ね、都独自の条例を検討している。
働く場、就業環境を守っていく。そのことがとても重要であることを認識しており、女性活躍やキャリアアップの悩み、女性相談に応じる新たな拠点をつくる。シニア層にはキャリアシフトの支援拠点を6月に設置する。機能をさらに強化して「会社と地域のそれぞれで活躍できる」場を広げるほか、「年収の壁」問題の対策や男性の育休取得の取り組みも着実に進めていく。
泉・立憲代表「政治を変えて皆さんの生活を改善」
中小・個人事業者も含めた日本全国の価格転嫁が絶対に必要。皆さんが一生懸命働いている中で、裏金とかの政治は何なんだと思わないだろうか。私たちはまっとうな政治を目指して国会で闘う。綺麗な政治は当たり前であり、金儲けに熱心になる政治を変えて皆さんの生活を改善する。その政治に立憲民主党は邁進する。
この物価上昇を上回る賃上げを達成するため、立憲民主党は汗をかく。介護や保育の分野の賃上げはもちろん、公務員の皆さんにもしっかりとその賃上げが届き、企業は政治献金よりも賃上げにお金を回せる、このことを改めて訴えていく。
玉木・国民代表「通常国会に『ダブルケアラー支援法案』を提出」
国民民主党は結党以来、給料が上がる経済の実現を掲げてきた。この高水準の結果は本当に素晴らしく、新しいステージにどう入っていけるのかがポイントだと思っている。
地方や中小企業、小規模事業者で働く人たちへの高いレベルでの賃上げを広げることと同時に、子育てと介護と仕事の三刀流を強いられる状況をどう制度として支えていくかが大切だ。国民民主党は通常国会に「ダブルケアラー支援法案」を提出している。子育てと介護が分離されて、新たな行政の縦割りが生まれているので、しっかり連携が強化できる政策を進めていく。
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