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2024年4月 8日

「物価と賃金の好循環」軌道に?

大幅賃上げ実現、次の課題は...

 「物価と賃金の好循環」が実現する兆しが見え始めた。連合が4月4日に発表した「春闘第3回集計」(2日時点)によると、賃上げ平均額は1万6037円、賃上げ率5.24%と5%台をキープしており、物価上昇の2%台を上回っている。これを受けて日銀はマイナス金利を撤廃するなど、「デフレ脱却」への流れが加速している。しかし、この勢いが持続するかどうか、まだ予断を許さない状況にあり、実質賃金のプラス転換にはもう少し時間が掛かりそうだ。(報道局)

sc240408.png 5.24%の賃上げ率は昨年の同期より1.54ポイント上回っており、1991年当時の5.66%以来の高水準。企業規模別では、従業員300人以上の中堅・大企業1020組合で1万6363円(同5.28%)、同300人未満の中小1600組合で1万2097円(同4.69%)となっている。

 回答済み企業の割合は中堅・大企業で7割、中小企業で4割程度と推定され、中堅・大企業はヤマ場を越えたとみられる一方、中小企業はこれからがヤマ場。中小の勢いが今後も持続するかどうかが、春闘後半の最大の焦点になる。物価上昇は、やや落ち着きを取り戻している。総務省の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合で2月は2.8%。1年前の3%台から昨年後半に2%台に下がったまま推移している。2月の場合、「生鮮以外の食料」が5.3%、「家具・家事用品」が5.1%の高い伸びを見せた一方、「光熱・水道」はマイナス3.0%、「交通・通信」も2.9%の伸びにとどまった。

 これに対して、賃金はまだ伸びていない。厚生労働省の毎月勤労統計調査では2月速報値の伸びが名目1.8%増。実質1.3%減。名目賃金は26カ月連続のプラス、実質賃金は23カ月連続のマイナスという長期に及んでいる。賃金自体は伸びてはいるものの、物価上昇がそれを上回り、国民生活の水準ダウンが続いている状態が2年近くも続いていることになる。

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春闘の第3回集計に手応えを示す連合の芳野友子
会長=4月4日・連合会館

 今春闘で「高額回答」が相次いだことで名目賃金が物価上昇を上回り、実質賃金がプラス転換するかどうか、政労使とも注視しているが、今年だけに限ればその可能性はかなり高まってきている。そのカギとなるのが、残る過半数の中小企業の回答、さらには労組のない中小・零細企業など"裾野"への波及効果だ。それらを数字上で確認できる時期は早くても6月ごろになるとみられ、それまで2~5月の実質賃金がプラス転換するかどうか注目されている。

生産性向上なしに持続性なし

 根本的な課題は、「賃金アップの持続性」と「労働生産性の向上」にありそうだ。というのも、昨年と今年の賃金上昇は海外要因による物価高騰への対応という側面が強く、いわば「生活防衛」のためであり、企業の生産性が上がったからではない。来年以降も物価以上に賃金を上げ続けるには、生産性の向上が不可欠だが、これが大きな壁になっている。

 日本の労働人口は今後増える可能性がないなかで、景気回復とともに人手不足が本格化しており、「2024年問題」に直面している建設や物流などの業種では極めて深刻な状況となっている。帝国データバンクの調査では、23年度の「人手不足倒産」は313件で前年度から倍増しており、その半数近くが建設、物流企業。大半が従業員10人未満の中小・零細企業だが、退職者の補充ができずに行き詰まるケースが多く、そうした事情は中堅・大手でも似たり寄ったりだ。

 そんな環境下で人材を確保して売り上げを伸ばすには、...


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