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2024年3月 4日

カギ握るコスト転嫁、24年春闘終盤

「5%以上」相次ぐ大企業、中小は?

 3月に入り、2024年春闘は最終版に差し掛かっている。今年は連合が「5%以上」の賃上げを勝ち取る意気込みで、一部で満額回答した大企業も出ている。しかし、それだけで政府の描く「賃金と物価の好循環」が実現しないのは、昨年で経験済みだ。最大の焦点は、大企業の賃上げの勢いが中小企業にどこまで波及するかに掛かっている。(報道局)

 大企業ではすでに回答している企業もある。自動車のホンダは2万1500円(賃上げ率5.6%)、マツダも1万6000円(同6.8%、一時金を含む)で妥結。サントリーも1万3000円(同7%)で決着しており、大手生保は一律に7%アップを表明。今年は政労使を挙げて「昨年以上の賃上げ」を目指す流れを作っており、13日の集中回答日には目標を上回る回答が続出するとみられる。

sc240304.jpg 連合は3月1日夕、サラリーマンが行き交う東京・有楽町で街頭アピール活動を展開。芳野友子会長は「みんなで賃上げ。ステージを変えよう!」と書かれた横断幕を前に「昨年の春闘は30年ぶりの高水準を達成したが、残念ながら物価高が続く中で実質賃金はマイナス。今年の春闘は昨年を上回る結果を目指しており、そのためには価格転嫁、価格交渉、環境整備が重要だ」と強調し、とりわけ中小企業に堂々と交渉に臨むよう呼び掛けた=写真

 大企業の動向だけでは、賃上げの実感は不十分。22年春から続いている物価上昇によって、国民生活は苦しさを増している。厚生労働省の毎月勤労統計では、名目賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金は、昨年12月で21カ月連続のマイナスが続く。苦しいのは家計だけでなく、経営余力の乏しい中小企業や個人経営企業にも及んでいる。

 東京商工リサーチが実施した賃上げ調査によると、対象企業4581社のうち、「23年を超える」賃上げを予定している企業は11.6%(532社)に過ぎず、「23年と同じ程度」が51.6%(2363社)と過半数を占めた。さらに、資本金1億円未満の企業では「23年を下回りそう」が19.6%(810社)、「賃上げは無理」が17.9%(740社)に上り、「23年を超える」はわずか11.3%(468社)しかなかった。

 これを裏付けるように、日本商工会議所が1月に実施した調査(中小2988社が回答)では、61.3%(前年比3.1ポイント増)の企業が賃上げを予定してはいるものの、従業員「6〜10人」企業では50.3%、「5人以下」企業では32.7%に減る。「5人以下」では「賃上げ見送り」も16.8%あった。

 また、賃上げ率についても、最も多いのは「2%以上〜3%未満」の24.7%で、「1%以上〜2%未満」が18.6%で続く。「3%以上〜4%未満」が17.3%あり、これを含む「3%以上」は36.6%。23年より3.1ポイント増えており、賃上げ機運は昨年より高まってはいるものの、それでも半数近くは3%未満を考えており、「5%以上」で気勢を上げる大企業とは大きな開きがある。

政府、価格交渉に消極的な企業名公表

 その主な理由が売り上げの低迷と原材料の高騰だが、コスト増加分を十分価格転嫁できない中小企業の立場の弱さがネックとなっている。このため経済産業省は昨年9月に下請け企業を対象に調査を実施し、転嫁に消極的な大企業の社名を1月に公表した。下請中小企業振興法に基づき、継続実施しているものだ。

今回はJCOM、ヤマト運輸、大東建託、ミサワホームなどの日本を代表する企業が並び、業種では「2024年問題」を控える物流業界が多かった。ただ、政府が求める「適正な価格転嫁」の「適正」には取引の実態によってさまざまなケースがあることから、基本的には企業間の協議で決まり、政府は自主的な改善を促すだけで強制力はない。

 大企業の場合は景気回復や円安などで営業利益を更新する企業が相次いでいるが、...


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