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2024年1月22日

今年も「大幅賃上げ」の大合唱

中小企業の動向がカギに、春闘

 2024年の春闘が本番を迎えた。連合と経団連がそれぞれの基本方針を発表し、政府が双方を後押しする政労使会議を1月22日にも開く見通しだ。昨年は30年ぶりの大幅賃上げが実現したにもかかわらず、物価上昇の方が上回り、国民生活のレベルダウンが続いている。これを克服しない限り「デフレ脱却」は困難なだけに、今年は労使の本気度が試される正念場となる。(報道局)

 経団連は1月16日、経営側の春闘方針を盛り込んだ「経営労働政策特別委員会報告」を発表し、今年の賃上げについて「ベースアップを有力な選択肢として検討することが望まれる」として、23年を上回る賃上げの実現に前向きな姿勢を示した。これに対して連合は「春季生活闘争方針」で「賃上げ3%以上、定期昇給相当分を含めて5%以上」を目安にすることを明らかにしている。昨年の5%「程度」から5%「以上」に目標を引き上げたのは、昨年の賃上げが物価上昇分を追い越せなかったためだ。

 政府も労使の積極姿勢を支援する方向で、岸田首相は政府与党連絡会議で、物価上昇を上回る賃上げの実現に向けて「デフレ心理とコスト削減の縮み志向から完全に脱却すべく、全力を挙げる」と強調。政労使会議の場で檄(げき)を飛ばす意向だ。

sc240122.png 昨年の春闘はかなりの成果を挙げている。連合によると、昨年の賃上げ(5272労組、約288万人)は平均1万560円(前年比3.58%増)と1993年の3.90%に次ぐ高い水準となった=グラフ。経団連の集計(加盟136社)でも1万3362円(同3.99%増)と1992年以来の高い伸びだった。

 厚生労働省が昨年11月に発表した「所定内賃金の引き上げ調査」(常用労働者100人以上の1901社)でも9437円(同3.2%増)となり、連合や経団連よりは低かったものの、それでも1999年以来の伸び。従来の1〜2%台に比べれば、「大幅賃上げ」となったことは確かだ。しかし、問題は物価上昇が賃金上昇を上回ったままにある現実だ。厚生労働省の毎月勤労統計調査(毎勤)によれば、毎月の名目賃金は22年1月〜23年9月で21カ月連続のプラスとなったものの、伸び率はわずか1%台で推移。そこへロシアによるウクライナ侵攻のあおりなどで、22年4月から輸入物価を中心に高騰し、エネルギー価格や食料品価格などの消費者物価を押し上げた。

 このため、名目賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金は、22年4月から23年11月まで20カ月連続のマイナスが続いている。マイナス幅は2%台半ばの月が多かったが、政府の予想に反して昨年11月は3%に拡大。賃上げの目的が労働者の生活水準を向上させることにある以上、実質賃金がマイナス続きという事態は「大幅賃上げ」の効果を打ち消しており、「賃金と物価の好循環」は道半ばだ。

デフレ意識をどこまで払拭できるか?

 その大きな要因として、雇用の7割を占める中小・零細企業の存在がある。多くの中小企業は資金力に乏しく、賃金水準も大企業に比べると低い。東京商工リサーチが昨年8月に実施した「賃上げ調査」(2942社)によると、...


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