2024年、「活力旺盛に大きく成長する年」とされる辰年がスタートした。政治資金を巡る疑惑と混迷が年またぎとなり、晴れやかな幕開けとは言えないものの、コロナ禍で停滞した経済を成長軌道に乗せたいという国民の期待は大きい。賃上げが物価上昇に追いつかない状況が1年半以上も続く閉塞感。政府は今年の春闘で2年連続の大幅賃上げを促し、6月からの定額減税などの効果をかみ合わせて、年央には「物価を上回る賃金」に逆転させたい考えだ。今年の政治・経済の動き、そして「多様な働き方」の法整備と支援を拡充する雇用労働政策の流れを整理する。(報道局)
今年は、フランス・パリ五輪をはじめとする注目度の高いイベントや祭典が開かれるほか、台湾総統選挙やロシア大統領選、アメリカ大統領選など日本とかかわりの強い主要国の大型選挙が相次ぐなど、耳目を集める動きが満載の1年となる。国内では8月に岸田首相の自民党総裁任期が満了となるため、これをにらんだ政局が政治不信の流れと相まって加速する可能性が高い。
政治:4月の補欠選挙は大量?衆院解散は?
国政選挙の任期をみると、衆院は来年10月、参院も来年7月(半数改選)で、規定上は今年の大型選挙はない。しかし、解散のある衆院は常在戦場とあって、政局次第で十分にあり得る。昨年は、5月に岸田首相の地元で開催された「G7(先進7カ国)広島サミット」後の解散が本命視されたが、踏み切れずに終わった。政権与党の現状は、昨春よりも政治資金疑惑などで支持率が悪化しており、回復の兆しも見えない。6月の「賃金上昇の実感」が政権にとって唯一の拠り所だが、そこまで岸田政権がもつか微妙な情勢だ。
自民党内で岸田首相に代わる総裁候補が浮上せず、3月の来年度予算成立まで乗り切った場合でも、現実的に政権与党が直面する「壁」が4月に訪れる可能性がある。11月に亡くなった衆院島根1区の細田博之氏の欠員補選は確定しているが、東京地検特捜部が総力を挙げて捜査している政治資金疑惑で複数の議員が立件されて補選規定の3月15日までに辞職した場合、超逆風の中で「大量補選」に至ることも想定される。もちろん、政治資金規正法違反(虚偽記入、不記載)で東京簡裁から罰金や公民権停止の略式命令を受けたとしても、議員側は正式裁判を請求してすぐに辞職しない選択もできるので、捜査と世論の展開次第となりそうだ。
いずれにしても、国内政治は不安定な低空飛行にあえぎながら、与野党を問わず「混迷」からの脱却を模索する流れが続くことなる。
経済:回復軌道を維持、「大幅賃金アップ」の勢い
2024年の日本経済は回復軌道を維持しそうだ。デフレ脱却のカギは「大幅賃金アップ」にあることは間違いなく、連合は今年の春闘で「5%以上」を掲げた。大企業は長引く世界の紛争などを理由に牽制しつつも、要求に応える構えを見せており、昨年の上げ幅3%台を超える4%台に達する見通しだ。ただ、 中小企業にとっては人件費などのコスト上昇分を製品価格にきちんと転嫁できる環境が不十分で、賃上げの余地が限られる企業も少なくない。
東京商工リサーチが実施した「賃上げ調査」をみても、賃上げが「23年度を超えそう」とみている企業は11.6%に過ぎず、「23年度並み」が過半数の51.5%を占めた。「23年度を下回りそう」と「賃上げ不可能」を合わせると36.8%にもなり、人手不足などによる業績不振にあえぐ企業にとっては、賃上げ問題が重くのしかかる。
政府は、一定の基準を超える賃上げを実施した企業の法人税を減税する「賃上げ税制」を拡充する方針だ。具体的には、中小企業が賃上げを行って赤字になった場合、最大5年間は減税を繰り越せる措置を設ける。期限内に黒字に転換できた際に減税を受けられることから、あらゆる分野の中小企業に賃上げを促したい考え。これ以外にも、中小企業・小規模事業者の事業場内で最も低い賃金を引き上げるために実施している「業務改善助成金」も、活用の利便性を図って充実させる方針だ。
1990年代初頭のバブル崩壊から延々と続く"縮小経済"。政府の支援や減税など各種政策がかみ合って奏功すれば、今年は脱却の糸口が見えてくる可能性がありそうだ。
雇用労働:障害者法定雇用率引き上げ、フリーランス新法など
政府と厚生労働省は、「三位一体の労働市場改革」と「労働市場基盤整備」を旗印に、リスキリング(学び直し)による能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化――を推し進める政策や、それらに連動する労働法制の整備を本格化させる。
施行や実施が確定している主な労働法制をみてみると、...
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