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2023年12月 4日

2年連続大幅賃上げの条件

連合が「5%以上」目標を決定

 労働者の実質賃金がマイナスを続ける中、連合は来年の「春季生活闘争方針」で「定期昇給相当分を含む5%以上」の賃上げ方針を正式決定した。昨年の「5%相当」から一歩踏み出した表現だが、今年は「大幅賃上げ」が実現したにもかかわらず、物価上昇の方が上回り続けているのが実情だ。2年連続の「大幅賃上げ」でプラス転換に導けるかどうかが焦点となる「24年春闘」。カギを握るのは大企業ではなく中小・零細企業の動向になりそうだ。(報道局)

 連合によると、「24年春闘」は2月5日の「闘争開始宣言中央総決起集会」、3月1日の「春季生活闘争・政策制度要求実現中央集会」などを経て、3月12~14日を集中回答のヤマ場に設定している。芳野友子会長は「賃金は上がり続けるという流れを根付かせたい」と強調する。政府も大幅賃上げに向けて積極姿勢を打ち出している。11月15日の政労使会議で、岸田首相は今年の大幅賃上げを評価しつつ、「デフレからの完全脱却を実現するため、足元の物価動向を踏まえつつ、今年を上回る水準の賃上げを」と労使に強く望んだ。

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「24年春闘」要求方針を議論する連合傘下最大の
UAゼンセン=東京都文京区、2023年11月6日

 政府としても、中小企業の賃上げが進むよう、支援の税制措置を拡充したり、人件費にあたる「労務費」の適切な価格転嫁に関する指針を公表して、企業側に対応を働きかけていく考えだ。また、国民の可処分所得を増やすため、所得税の定額減税などを実施する。しかし、効果については野党などから強い批判も出ている。

 一方、経団連の十倉雅和会長は11月20日の記者会見で、「今年以上の熱量で賃金引き上げに取り組みたい」と述べたが、実質賃金のマイナスが続く現状については「ベースアップだけで対応することは難しい。企業による賃金引き上げと、政府による給付金などの経済対策を両輪に、官民連携によるデフレからの完全脱却、賃金と物価の好循環の実現を目指すべきだ」とも述べ、課題の難しさを強調している。 

 連合によると、今年の賃上げ(5272労組、約288万人)は平均1万560円(前年比3.58%増)と1993年の3.90%に次ぐ高い水準だった。経団連の集計(加盟136社)でも1万3362円(同3.99%増)で1992年以来の伸びだった。厚生労働省が11月に発表した「所定内賃金の引き上げ調査」(常用労働者100人以上の1901社)では9437円(同3.2%増)となり、連合や経団連よりは低いものの、それでも1999年以来の伸びとなった。

 ところが、厚労省の毎月勤労統計調査(毎勤)を見ると、様相はガラリと変わる。毎月の名目賃金は昨年1月~今年9月で21カ月連続のプラスとなったものの、伸び率はわずか1%台の低レベルで推移。そこへロシアによるウクライナ侵攻のあおりなどで、昨年4月から輸入物価を中心に物価が高騰した。物価上昇分を引いた実質賃金は、昨年4月から今年9月まで18カ月連続のマイナスが続いている。マイナス幅は2%台半ばの月が多く、春闘の「大幅賃上げ」を帳消しにしている。

実質賃金のマイナスから抜け出すには...

 毎勤は従業員5人以上の約2万2600事業所を対象にしている大規模調査で、連合や経団連の大企業中心の調査より対象が広い。すなわち、春闘で勝ち取った「大幅賃上げ」も、中小・零細企業にまでは浸透しないと推定され、全体では物価上昇を下回る賃金水準が続いていることになる。実質賃金のマイナスは家庭の消費心理を冷やし、個人消費の停滞を招いており、政府の目指す「賃金と物価の好循環」からはほど遠い状況にある。

 浸透しない原因はさまざまだが、その一つにコスト上昇分を発注企業側に価格転嫁できない中小企業の立場がある。中小企業庁が...

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