人材ビジネス会社の2023年9月(第1、2四半期累計)連結中間決算が出そろった。世界的なインフレによって日本国内も物価高に見舞われたものの、新型コロナの沈静化や人手不足の顕在化などにより、企業の人材需要は依然として旺盛だ。しかし、順調に業績を伸ばす人材企業が多い一方で、人材の「高度化」はまだ手探り状態だ。(報道局)
事務系最大手のリクルートの場合、国内は人材派遣需要の増加による稼働人数増、採用需要の増加によって売上高(売上収益)を伸ばしたが、海外は米国の労働市場の標準化が進み、求人広告が減ったことから、Indeedが大幅に落ち込み、全体の売上高も微減となった。通期でも先行き不透明を理由に、売上高は3四半期分で2.1~1.4%の減収を予想している。
パーソルは国内派遣、紹介、海外とも売上収益を順調に伸ばしたが、派遣社員の社会保障コストの増加やコロナ関連事業の終了、新卒エンジニア採用のコスト増など、「一時的・季節的要因」によって減益となった。通期では営業利益を545億円(前期比27.5%増)の増益を見込んでいる。同グループは23年度から国際会計基準(IFRS)に移行した。
ヒューマンHDは派遣、教育、介護など全部門で増収。通期売上高も970億円(前期比6.0%増)を予想している。WDBも売上高を伸ばしたが、派遣社員の待遇改善で減益。通期では利益面を前期並みに上げる予定だ。
技術系も順調だ。「正社員技術者」のメイテックグループホールディングス(10月に持ち株会社に移行)はメイテックとメイテックフィルダーズともにエンジニア数、稼働率とも上昇し、利益は二ケタ増。通期でも増収増益基調を堅持する構えだ。製造請負・派遣のNISSOホールディングス(同)も中核の日総工産が自動車関連の稼働回復もあって増収増益。通期では売上高1000億円の大台達成を狙う。
nmsは主力の海外EMS事業の投資効果が表れて増収となり、利益も昨年の赤字から黒字転換した。UTは半導体分野の人材需要が低調で減収、採用数を増やしたため減益となり、これまでの高度成長は"一服"状態だ。
決算期の異なるアウトソーシング(12月期決算)は1~6月期の売上高が3607億円(同10.9%増)の二ケタ増を維持した。しかし、雇用調整助成金を巡る不祥事などが続いており、企業風土の改善に追われそうだ。テクノプロ(6月期決算)は7~9月期の売上収益が528億円(同9.7%増)と二ケタ近い伸び。ワールドインテックを擁するワールドホールディングス(12月期決算)も1~9月期が1509億円(同14.1%増)と好調が続いている。
人手不足を背景に業績を伸ばしてきた求人メディアでは、ディップが売上高11.4%増の二ケタ増を維持。エン・ジャパンは売上高が微増だったが、人件費や広告宣伝費などが増えたため大幅減益となった。通期ではディップが売上高、営業利益とも二ケタ増を見込んでおり、エン・ジャパンも売上高、営業利益を7~8%増まで伸ばす予定だ。
関連統計をみると、人材市場は昨年の急回復局面から少し落ち着きを取り戻している。日本人材派遣協会によると、23年第1四半期(1~3月)の派遣社員実稼働数は41万1877人(前年同期比7.8%増)、第2四半期(4~6月)も40万8074人(同6.3%増)とやや低減傾向にあるものの、後半も40万人の大台は続くとみられる。
転職についても増加傾向が続いており、総務省によると今年1~3月の転職者は約296万人で前年同期より34万人増えた。ホワイトカラーの転職を仲介する日本人材紹介事業協会の会員調査では、4~6月の紹介実績について前年同期より「改善」した比率が約6割となっており、市場はまだ拡大していると推定される。
全国求人情報協会によると、企業の求人広告は非正規労働を求めて今春から大きく伸び、3月に150万件を超えて以来、140万~150万件の二ケタ増で推移してきた。しかし8、9月は"広告疲れ"もあって件数を減らしており、下半期は緩やかな増加が見込まれる。
急がれる人材の「高度化」
上半期の業績は順調に見えるが、下半期は予断を許さない。1年半以上に及ぶ実質賃金のマイナスで家庭の消費活動が低迷しているうえ...
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