今春以降、「フリーランス」というワードが耳目を集めている。目新しいわけでもなく、一般的に浸透している存在なのにどうしてなのか。今年4月に成立したフリーランス新法が契機であるのは確かだが、それに加えて10月に導入されたインボイスやアマゾン配達員の労災認定、労働安全衛生法の保護対象拡大、社会保険料を巡る「年収の壁」など、フリーランスを取り巻く諸課題と対応策が多方向から集中しているからだろう。雇用労働分野で目下最大のテーマとなっているフリーランスについて、その周辺動向を整理する。(報道局)
「フリーランス」は法令用語ではない。「個人で仕事を請け負う働き方」「業務に応じ企業や団体と自由に契約を交わして働く人」など表現はさまざまだが、政府は「実店舗がなく、従業員がおらず自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得ている人」と定義している。
まず、フリーランス新法は、4月28日に成立した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の通称だ。発注者に契約内容を書面などで明示することを義務付けるなど、立場の弱いフリーランスの労働環境を守るのが目的。ただ、日本の労働法が「雇用」を中心に整備されてきたこともあり、多くの課題が残っている。新法の骨子は、事業を発注する側の「特定業務委託事業者」(発注企業)の規制を強め、受注側の「特定受託事業者」(フリーランス)が不利にならないように整備した点が特徴だ。
この法律の施行は来年秋ごろで、それに向けて9月11日に有識者による検討会が本法に連なる政省令の議論を開始した=写真。フリーランスを活用またはマッチングするプラットフォーマーや団体などのヒアリングを踏まえ、年内に骨子をまとめ、年明けに報告書を取りまとめる方針だ。デリバリーやIT、俳優など業種・業態によって抱える事情が異なるため、一律のルール設定は発注側とフリーランス双方の活動を窮屈にしてしまう可能性もあり、幅広い意見を聞きながら、月2回ペースで検討を進めている。
現在進行形の法整備とは別に、売手が買手に正確な適用税率や消費税額を伝えるインボイス(適格請求書)制度の開始を巡って、フリーランスが注目を集めた。「インボイス制度を考えるフリーランスの会」がオンラインで集めた導入反対の署名は54万筆を超え、「自由な商取引をゆがめ、新規参入を阻む制度だ」「日本の文化やインフラを破壊する」などと主張。首相官邸前などでの抗議活動が、多くのメディアから発信された。岸田首相は9月29日に開いた「インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議」の初会合で、事業者の抱える不安解消を念頭に、取引環境の改善や取引のデジタル化、自動処理の推進につながる支援の実施を指示した。
「偽装フリーランス」を保護する流れ加速
フリーランス新法成立時の付帯決議には「いわゆる偽装フリーランスの保護のため、適切に対応できるよう十分な体制整備を図ること」と明記された。こうした流れの中、9月下旬にネット通販「アマゾン」の配達を担う60代のフリーランスについて...
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