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2023年9月 4日

消費税、10月からインボイス導入

免税業者との取引、未定企業が3割

 消費税を正確に納めるインボイス(適格請求書)制度の10月導入まで1カ月を切った。課税業者の9割以上はすでに登録を済ませているが、問題は納税義務が免除されている免税業者の扱いだ。政府は各地の税務署などで説明会を繰り返し、免税業者が不利な扱いを受けないよう周知に努めているが、不安や反対の声はいまだに強く、すんなり導入が進むのか注目されている。(報道局)

 東京商工リサーチが8月1~9日に実施した調査によると、個人事業主を除く5896社の回答はインボイス事業者の登録申請を済ませた企業が92.6%に上り、9月以降の登録予定も含めると98%に達する見通し。ただ、インボイス受領の準備がすでにできている企業となると72%に下がり、できていない企業がまだ28%あった。

sc230904.png 従来からの課税業者の対応はほぼできているとみてよいが、問題は免税事業者への対応だ。登録しない事業者に対して55.5%の企業は「これまで通り」と答え、昨年末の時点よりかなり増えた。しかし、「取引しない」が8.4%、「取引価格を引き下げる」が3.4%あり、両者を合わせると1割以上にあたる600社余りが対応を変える方針。「検討中」も32.8%あり、いまだに3割以上が態度を決めかねているのが実情だ=グラフ

 国税庁の調査では、7月末時点の登録申請件数は約370万件。そのうち課税事業者は9割を超える約278万件で、残りの約92万件は免税事業者だ。免税事業者は約460万件と推定されるから、登録者は2割ほどに過ぎない。このため、政府は「特例措置」を設けて課税業者になるよう"アメ"も用意しているが、急増する可能性はいまのところ低い。

 インボイス制度は現在の消費税率になった2019年に導入が決まったが、事務処理などの負担増を嫌う中小・零細企業、個人事業主、フリーランスらの反対が強く、今日まで実施を見送ってきた。年間売上高が1000万円以下の事業者は消費税の納税義務はなく、企業もそれを前提にビジネスをしてきた経緯がある。ただ、消費税分がそのまま「益税」として事業者の収入となる「不公正」は明らかで、いずれ是正は必要だった。

 消費税は企業から企業へ"バトンタッチ"され、最終的には消費者が負担するが、その過程で企業は販売時に生じた消費税から仕入れ時に受け取った消費税を差し引いて納付する「仕入れ税額控除」を使う。10月からは税額控除にインボイスが必要となるが、仕入れ先がインボイス登録していないと税額控除はできなくなる。

 例えば、販売時の消費税が100円掛かり、仕入れ時の消費税が40円だった場合、その企業は100円から40円を引いた60円を納税する。しかし、仕入れ先がインボイス登録していないと、この40円分の負担が宙に浮くことになる。このため、企業の中には免税業者との取引を打ち切る、あるいは支払い額から消費税相当分を差し引くことが懸念されている。東商リサーチの調査では「従来通り取引する」が過半数を占めたが、問題は「取引」の内容で、「納期を守らなかった」などさまざまな理由で値下げ圧力を強める可能性もあり、すでにそうした苦情もかなり増えている。

特例措置は設けたが......

 政府はこの種の「不利な条件変更」を法律違反として目を光らせる一方、免税業者側にもインボイス導入を促す「簡易課税」や「2割特例」の優遇措置を設けた。「簡易課税」は...


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