コロナ後の企業の人手不足が再び深刻化している。正社員、非正規社員とも不足している業種が多く、「人手不足倒産」も増えている。コロナ禍で人手不足は一時的に緩和されたが、すぐに不足の度合いを強め、ピーク時の2018年を超える勢いだ。しかし、労働力人口が減少している以上、小手先の対策で効果を出すのはむずかしく、官民挙げて"異次元"の対策を講じる必要がありそうだ。(報道局)
サービス業界は省力化に懸命
帝国データバンクが定期実施している「人手不足に対する企業調査」(1万1265社の集計)によると、7月時点の人手不足企業の割合は正社員で51.4%(前年同月比3.7ポイント増)、非正規社員で30.5%(同2.0ポイント増)だった。正社員不足は7月としては18年当時の50.9%を上回る過去最高で、非正規も5年ぶりに30%を超え、18年当時の33.0%に近づきつつある。不足度はどちらもコロナ禍で急落し、20年前半には各29.1%、15.2%まで下がったが、その後はほぼ一貫して上昇を続けている。
正社員の場合、業種別では「情報サービス」が74.0%、「旅館・ホテル」が72.6%でともに70%を超えている。情報サービスは9カ月連続の7割超えで、デジタル人材の不足が鮮明。現在は企業のDX化に加え、10月からのインボイス制度や改正電子帳簿法の実施を前に、システム改修案件が増えているのが要因だ。
さらに、旅館・ホテルの場合は新型コロナの5類移行に伴う国内外の旅行客増加が主要因で、とりわけ外国人旅行客の急増が人手不足に拍車を掛けている。コロナで離職した従業員が十分戻らないまま、顧客増の波が押し寄せた形だ。この業界は非正規の就労も多く、不足度は「飲食店」の83.5%に次ぐ68.1%に上っている。
この厳しい状況を反映して、事業が立ち行かなくなった企業も増えている。東京商工リサーチによると、今年1~7月の「人手不足関連倒産」(負債1000万円以上)は83件に上り、すでに昨年1年間の62件を上回っており、最多だった19年の156件を更新する勢い。その内訳は「求人難」が35件で最も多いものの、「人件費高騰」が29件、「従業員退職」が19件となっており、昨年はなかった「人件費高騰」が登場している点が大きな特徴だ。
同社によると、コロナ明けで経済活動が復活しても、賃金などの条件が良い企業はともかく、資金余力の乏しい中小企業では人件費の上昇圧力が資金繰りを圧迫して破綻に至るケースが増えているという。全体の倒産件数の約4800件の1.7%程度に過ぎないものの、...
※こちらの記事の全文は、有料会員限定の配信とさせていただいております。有料会員への入会をご検討の方は、右上の「会員限定メールサービス(triangle)」のバナーをクリックしていただき、まずはサンプルをご請求ください。「triangle」は法人向けのサービスです。