政府の中央最低賃金審議会(藤村博之会長)が7月28日、2023年度の最低賃金(最賃、時給ベース)の引き上げを過去最大の4.3%増、41円を目安として示した。全国平均では前年の961円から1002円に引き上げられる。これを目安に各都道府県の審議会が引き上げ額を決定し、10月から順次施行となる。政府目標の「全国加重平均1000円」は達成したものの、フルタイムで働いても年収200万円前後と先進国では見劣りするレベル。持続的な賃上げにつなげるには、「三位一体の労働市場改革」の推進や、働き控えを誘発する「年収の壁」是正に向けた制度見直しなど、政府による多角度的な支援策と改善策の断行が不可欠だ。(報道局)
初めて「3グループ」で目安、新たに5府県で1000円超
最賃は物価水準や給与水準などによって、47都道府県をA、B、Cの3グループに分け、目安額も少し異なる。昨年までは4グループだったが、地方の最低賃金が上がりやすい仕組みになるよう変更。今回、最も水準の高いAグループの東京など6都府県は41円で、Bグループの北海道など28道府県は40円、Cグループの青森など13県が39円とした=表。
現在は東京、神奈川、大阪の3都府県が1000円台に達しているが、仮に目安通りに引き上げられると、埼玉、愛知、千葉、京都、兵庫の5府県も「1000円都府県」になる。しかし、東京が1113円になるのに対して、青森や沖縄など10県は892円となり、最高と最低の開きは221円とほとんど変わらず、最賃議論の主要課題の一つだった「地域格差の縮小」は是正されずに残った形だ。
政府はかねてより最賃の引き上げに積極的で、2012年の最賃749円(前年度比1.63%増)から、第2次安倍政権が発足後の13~15年度は15~18円(同2.00~2.31%増)、16~19年度はさらに25~27円(同3.04~3.13%増)と引き上げ額のギアを上げてきた。17年度には「働き方改革実行計画」の一環として、「年率3%程度をメドとして、全国平均1000円の早期実現」を決定。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大で事実上据え置いたが、21年度は28円(同3.10%増)と再び3%台に伸ばし、22年度もこの流れを維持。今年はさらにアップし、約10年で250円も上昇することになる=グラフ。
目安額の根拠は何?労使の双方の主張とは
同審議会の目安に関する小委員会は、「春闘など足元の賃金動向」「企業の賃金支払い能力」「労働者の生計費」の3要素を考慮して公労使が協議を重ねてきた。今年は6月30日から7月28日まで計5回にわたって長時間に及ぶ議論を展開した。この中で労働者側は...
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