派遣、職業紹介、請負を営む人材サービス事業者への行政指導が増加している。東京、大阪、愛知の3労働局が6月下旬に取りまとめた2022年度の「民間人材ビジネスに対する指導監督状況」でわかった。東京労働局が指導監督した延べ事業所数は4348事業所(前年度比8.7%増)で、このうち是正指導(文書指導)を実施したのは3662件(同58.4%増)に上った。各労働局は本年度、派遣元と派遣先には「同一労働同一賃金」を含む均等・均衡待遇の適正な運営、紹介事業者には働き手に金銭を提供して転職を勧奨する「お祝い金」の禁止などに着目して指導監督を徹底する方針だ。(報道局)
3労働局の指導監督状況にはそれぞれ特徴がある。まず、東京労働局の22年度の行政処分(事業停止命令・改善命令)は、紹介事業を営む1事業主に発出。再三の指導に従わず、義務付けられている事業報告書の提出を拒んだことが理由だ。行政指導として指導監督を実施したのは延べ4348事業所で、内訳は派遣が3437事業所(同10.1%増)、請負は183事業所(同67.9%増)、紹介は688事業所(同0.1%増)となっている。指導監督は、計画的な定期指導と関係者からの申告や内部告発を端緒とするものがある。
このうち、是正指導に至ったのは3662件(同58.4%増)で、派遣が3115件(同63.0%増)、請負が62件(同55.0%増)、紹介は459件(同30.4%増)=グラフ。いずれも前年度に比べて大幅に増加している。主な指導内容として、派遣元には「労使協定締結における不備」や「マージン率など不適切な情報提供」、派遣先に対しては「管理台帳の記載内容の不備」や「比較対象労働者の待遇などに関する情報提供の不足」が目立った。紹介事業者については、求職者に業務内容や労働契約の期間など労働条件を適切に明示していないことへの指導が多かった。
大阪労働局の行政処分は、派遣事業を営む1事業主に偽装請負で改善命令を出した。指導監督を実施したのは延べ1853事業所(同28.1%増)で、このうち派遣が1195事業所(同6.5%増)、請負は21事業所(同41.7%減)、紹介は637事業所(同2.2倍)。このうち、是正指導に至ったのは1858件(同7.9%増)で、派遣が1218件(同8.8%減)、請負が17件(同30.8%増)、紹介は623件(同67.0%増)となっており、紹介事業者への是正指導が東京労働局よりも多かった。
愛知労働局の行政処分はなく、指導監督を実施したのは延べ1908事業所(同5.4%減)で、このうち派遣が1454事業所(同4.8%増)、請負は21事業所(同3.5倍)、紹介は433事業所(同30.5%減)。このうち、是正指導に至ったのは1237件(同4.3%減)で、派遣が1038件(同8.4%増)、請負が19件(同18.8%増)、紹介は180件(同43.4%減)となった。特徴としては、派遣の是正指導のうち、派遣元がわずかに減少したのに対し、派遣先が2.1倍に大きく増えたことが挙げられる。
派遣の「同一同一」は労基署と連携、本年度の指導監督方針
前年度までの行政処分や是正指導の傾向などを踏まえ、本年度は...
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