いわゆるフリーランスを保護する「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護新法)が4月28日の参院本会議で可決、成立した。発注者に契約内容を書面などで明示することを義務付けるなど、立場の弱いフリーランスの労働環境を守るのが目的だが、日本の労働法が「雇用」を中心に整備されてきたこともあり、まだ多くの課題が残っている。(報道局)
新法の骨子はもっぱら、事業を発注する側の「特定業務委託事業者」の規制を強め、受注側の「特定受託事業者」が不利にならない内容にした点が特徴だ。
具体的には、発注者に対して業務内容や報酬などの契約明示を義務づけたほか、報酬を相場より著しく低く設定したり、契約後に不当に減額したりすることも禁止。報酬の支払い時期を、"製品"を受け取った日から60日以内とすることも義務化した。
また、フリーランス側が出産、育児、介護と両立したい場合は、必要な配慮をする。各種ハラスメントに対応する相談窓口などを整備する。契約を中途解除する場合は30日前までに予告する。募集広告などでの虚偽表示を禁止するなど、「雇用者」に適用される内容も一部に盛り込んだ。
発注側がこれらに違反した場合、フリーランス側は国の相談機関に相談でき、国は違反行為に対して指導や勧告などを行うことができる。命令に従わない場合は50万円以下の罰金を科すことにしている。
フリーランスは組織に縛られない働き方として、古くからメディアやクリエイティブ業など一定の業種で存在しており、兼業・副業でフリーランス業務をこなす人も多かったことから、大きな社会問題にはならなかった。しかし、政府が「多様な働き方」の一環として兼業・副業を推進するに従い、職種の拡大とそれに伴うトラブルも増加。このため、17年ごろから経済産業省、公正取引委員会、厚生労働省、内閣府の関連省庁で、保護法制に向けた個別検討を進めてきた。
しかし、フリーランスを保護する法律としては従来、労働契約法、下請法、独占禁止法などがあるものの、労契法は「雇用関係」が前提であり、下請法は資本金1000万円以下の発注企業は規制の対象外、独禁法は「労働者保護」の規定がないなど、いずれも"帯に短し"の状態だった。
このため、官邸を中心にした未来投資会議で20年から、フリーランスの環境整備の検討に入り、21年3月には「ガイドライン」を公開したものの、強制力がないことから、新法制定の機運が強まった。しかし、コロナ禍に加え、自民党からフリーランスの定義や規制対象などをめぐって疑義が相次いだこともあり、法制化が大きく遅れたものだ。
この間にも、フリーランスをめぐる問題が続出。連合が21年10月に実施したフリーランス調査では、...
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