来春卒業予定の大学生に対する企業の採用活動が3月1日に解禁され、多くの企業が単独・合同の採用説明会を開始した。コロナ後の景気回復基調もあって、再び人手不足が深刻になっていることなどから、昨年以上の「売り手市場」になっており、学生側には有利な状況だ。すでに内定者も多く、就活ルールの形骸化が一段と進んでいる。(報道局)
ディスコが1〜2月に1209社を対象に実施した調査によると、採用については「増減なし」が53.5%(前年比6.5%減)で最も多かったが、「増やす」が32.8%(同6.2ポイント増)、「減らす」が6.1%(同0.1ポイント増)となった=グラフ。コロナ下で企業活動の制約が多かった21、22年は「増やす」企業が15%程度と慎重だったが、制限緩和が本格化した23年は26.6%に急回復。24年はさらに回復し、19年の30.8%を上回ってここ10年の最高を記録した。
企業規模別にみると、「増やす」比率の多いのは「従業員1000人以上」の36.7%(同1.8ポイント増)で、「同300〜999人」の34.4%(同6.9ポイント増)、「同299人以下」の29.2%(同9.6ポイント増)と規模が小さくなるほど少ないが、規模にかかわらず前年を大きく上回っている。業種で「増やす」比率の最も多いのは「IT」の40.1%(同19.0ポイント増)がダントツで、それ以外の製造、金融などは30%台前半。
同社によると、23年の充足率(採用予定数に対する内定者の比率)は平均76.8%(同6.1ポイント減)と前年を下回っており、採用計画が未達の企業が多かったことから、今年は採用を強化する動きが一段と強まっているようだ。
これを背景に、企業側の内定出しも早まっており、2月1日時点の内定獲得者比率は23.8%(同3.6ポイント増)と前年をかなり上回っている。リクルートの調査でも内定率は19.9%(同6.4ポイント増)で、かなりの前倒し傾向にあることがわかる。
企業側がここまで"急ぐ"理由には、深刻な人手不足がある。帝国データバンクの2月の発表によると、1月時点で人手不足を感じている企業は正社員で51.7%、非正規社員で31.0%に上り、いずれもコロナ前の19年当時と並ぶ水準になっている。中でも、コロナ明けで内外の観光客が戻ってきた「旅館・ホテル」業界では正社員不足が77.8%、非正規社員不足が81.1%と業種としては最も高い。多くは中途入社、転職などを通じて人材確保に努めているが、新卒の獲得にも積極的だ。
こうした背景により内定の前倒しが進んでいるが、それは就活ルールの形骸化も促進する要因となっている。政府が音頭を取っている申し合わせでは、3月に企業説明会、6月に選考、10月に内定というスケジュールだが、罰則規定がないこともあって外資系、IT系などの企業では申し合わせに従わず、各社の採用計画を優先する傾向が強かった。人手不足がそれに拍車をかけ、"フライング"を覚悟で人材獲得に走る企業が増えた結果、2月という解禁前に2割前後の学生がすでに内定を得ている実態が浮かび上がった。
ただ、前倒しが学生側にとってメリット一辺倒かどうかとなると、コトは簡単ではない。というのも、企業が実施するインターンシップが事実上の"面接"の役割を果たし、大学3年の夏休みに実施する企業が多いため、学生にとっては就活期間の長期化につながり、卒論執筆などの学生生活に支障をきたすという本末転倒の事態も生じているためだ。就活ルールには学生生活への配慮も重要要件となっているだけに、企業側の都合だけが優先されがちな現実に「新たなルールが必要」との声も出ている。
学生側は入社時から「転職」も視野に
一方、現代の学生は「終身雇用」への期待感が薄く、入社後の給与、待遇、人間関係などが希望通りにならないと、転職に走りがちだ。マイナビの「新入社員の意識調査」によると、...
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