企業などに義務づけられている障害者雇用の法定雇用率が、4月から引き上げられる。労働政策審議会の障害者雇用分科会(山川隆一分科会長)で1月18日に了承された。障害者の雇用数は年々増え続けているものの、就労環境が広がっているかどうかとなると、課題山積というのが実情だ。(報道局)
今回の法定雇用率の改定は障害者雇用促進法の見直し規定に基づくもので、企業の場合は現行の2.3%から2.7%、公的機関の場合は現行の2.6%から3.0%(教育委員会は2.5%から2.9%)にそれぞれ引き上げられる。
ただ、企業負担を緩和するため、2023年度は現行通りに据え置き、24年度から2.5%、26年度から2.7%に段階的に引き上げる。同様に、公的機関も24年度から2.8%、26年度から3.0%にする。2.7%は事務局の厚生労働省案では26年4月を予定していたが、企業側の反発が強く、3カ月後ろ倒しして同年7月からにすることで了承を得た=図。
また、障害者の就労になじまない業界に設定されている除外率制度も25年度から一律10ポイント引き下げられることから、5%の非鉄金属製造や倉庫業など、10%の水運業や採石業などは除外率の適用対象からはずれる。
2.7%の算出根拠は単純だ。法定雇用率は障害者(身体、知的、精神)の雇用者数と失業者数を分子に、常用労働者と失業者の合計を分母に割った数字となる。障害者の雇用数が増えると半ば自然的に雇用率は上昇するが、今回は昨年暮れの臨時国会で成立した短時間労働者(週10時間以上~20時間未満)の適用拡大で1人につき0.5人とカウントすることが24年度から始まることから、雇用率は0.4ポイント上昇する。
厚労省の試算では、対象となる短時間労働者は約10万人いて、常用雇用者と失業者にこれを加えると約102万人。一方、全ての常用労働者と失業者に短時間労働者の半分(0.5人分)を足すと約3753万人となり、雇用比率は2.71%になる。短時間労働者の拡大カウントが法定雇用率の大幅上昇につながったことになり、これが障害者雇用の一層の拡大に寄与する可能性はある。
障害者の雇用数は増えている。厚労省が毎年公表している22年「障害者雇用状況」によると、企業の雇用数は約61.4万人(前年比2.7%増)、実雇用率は2.25%(同0.05ポイント増)。公的機関が約7.1万人(同2.7%増)で、合わせると雇用数は68万人を超える。とりわけ、企業の場合は11年から11年連続で雇用数、実雇用率とも上昇が続いている。
企業の雇用の内訳は身体障害者が35.8万人、知的障害者が14.6万人、精神障害者が11.0万人。身体障害者が過半数を占めるが、高齢化などで近年は伸び悩んでおり、22年には初めて減少に転じた。それに代わって、知的・精神障害者が増えており、とりわけ精神障害者が18年度から雇用率の対象に加わったため、伸びが著しい。
過半数企業が法的雇用率未達、改善の兆しなし
しかし、雇用数は増えているものの、その実態には課題も多い。最大の問題は障害者雇用が一定の企業に偏っており、企業全体に広がらないこと。法定雇用率の達成企業の比率をみると、1970~99年代は50%を超えていたものの、2000年代になると50%を割り込み、一時は40%を割り込みそうな時期もあった。14年ごろから再び比率は上昇を続けるようになったが、近年では48%前後で推移しており、上昇の兆しもみられない。
言い換えると、法的に障害者の雇用義務のある企業でも、...
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