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2022年12月19日

来年10月のインボイス導入

取引先を変更?迷う企業

 自民・公明両党による2023年度与党税制改正大綱が16日決まり、消費税のインボイス(適格請求書)制度の導入が盛り込まれた。政府の既定方針であり、来年10月から実施されるが、これまで消費税を納めてこなかった中小・個人事業者らの反発を招く一方、日本のDX化の遅れがここでも表面化する事態となっている。(報道局)

 インボイス制度は現在の消費税率になった15年当時に導入が決まっていたもので、消費税額を正確に記録して納めるためのシステム。インボイスの発行により、これまで納入を免除されてきた中小企業、個人企業、フリーランスらの小規模事業者にも適用され、問題となっていた「益税」が大きく減ると予想される。

 現在の制度では、例えばA社が下請けB社から500円の商品を仕入れ、1000円で消費者に販売(税率10%)した場合、A社は100円の消費税を客から受け取り、B社から預かった消費税分の50円との差額の50円だけ納税する「仕入れ税額控除」が適用される。

 残りの50円分は本来ならB社が支払わなければならないが、年間売り上げ1000万円以下の場合は「免税事業者」として納入が免除され、50円はB社の「益税」となる。納税手続きの煩雑さやそれに掛かるコスト増を避けるために導入した一種の「経過措置」だが、最終的な支払い手の消費者にとっては、本来の半分しか納税されない不公正な制度であり、それを解消する手段としてインボイス制度を導入するものだ。

 導入によって「益税」が減少し、本来の税額が国に入るわけだから、問題はなさそうにみえるが、コトはそう単純ではない。というのは、インボイス導入により、A社が仕入れ税額控除を実施できるのはB社が「課税事業者」の場合に限られ、従来の免税事業者のままだと、益税分の50円もA社が納税しなければならなくなる。A社とっては課税事業者との取引の方が有利になる。

 こうした場合、A社が取る対応策としては(1)課税事業者との取引に絞る(2)自社で全額負担する(3)益税分をB社の仕入れ価格から差し引いて全額負担する――などが考えられるが、(2)以外はB社にとって不利な条件になりがちだ。A社が(1)を採用すれば、B社も課税事業者にならないと取引されなくなり、(3)を採用すれば売り上げが事実上減るためだ。

 このため、インボイス反対の声も強まっている。特に漫画家、アニメーター、声優などエンタメ業界では「死活問題」として反対が増しており、「アニメ大国・日本」の別な一面を見せつけている。日本商工会議所などもインボイス自体はやむなしとしながらも、「スムーズな導入には猶予期間が必要」と中小・零細企業の立場を訴える。

 これに対して、政府・与党も対応策を講じ、(1)課税事業者になればインボイス開始から3年間、納税額を本来の2割に軽減。4年目から3年間は半額、それ以後はなし(2)売上高1億円以下の事業者の1万円未満の取引は、インボイスを6年間不要にして事務負担を軽減――という軽減措置を設けた。

sc221219.png 財務省の推計ではインボイス導入により、免税事業者から課税事業者になる企業は約160万事業者で、約2500億円程度の税収増が見込まれるという。消費税収21兆8886億円(21年度)の1.1%程度に過ぎないことから、インボイス導入は税収増というより公平性の実現を狙ったものとみられる。

 企業側も迷っている。東京商工リサーチが最近実施した企業調査(4865社)によると、制度の内容を「知っている」企業は98.2%に上ったが、免税事業者との取引については「検討中」が46.8%で最も多く、「これまで通り」も40.3%あった。しかし、すでに「取引しない」が10.2%、「取引価格を下げる」も2.7%あった=グラフ。

 課税事業者の登録期限は来年3月末に迫っており、...


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