来年の春闘をめぐり、労働組合側の"高額"要求が相次いでいる。世界的なインフレに伴う物価高と実質賃金の低下に対して、危機感を覚える労働者側が声を上げ始めたものだ。政府や経済界も理解を示していることから、長年にわたって停滞していた春闘が久しぶりに活性化する兆しにもみえ、経営側がどう応えるかが大きな焦点になっている。(報道局)
連合は12月1日の中央委員会で、定期昇給分の2%にベースアップ(ベア)の3%分を加えた「5%程度」の統一要求目標を正式決定した。昨年までは4%要求を続けてきたが、「家計と企業が急性インフレに対応するため」、ベア要求を1%上乗せした。「官製春闘」が始まった2014年以降では過去最大の要求水準となる。
「23春闘」 要求方針に向けて議論する連合傘下
最大のUAゼンセン=11月7日・東京都文京区
これを受けて、傘下労組も"高額"要求を次々と打ちだしている。これまで春闘相場を形成してきた自動車、電機などの金属労協は前年の2倍にあたる「ベア6000円以上」を決定した。これは15年以来8年ぶりの高水準。機械関連の中小企業で構成するものづくり産業労組(JAM)はこれまでの要求額の1.5倍にあたる「ベア9000円」を要求する方針。流通、外食など非製造業の加盟が多いUAゼンセンは、連合の5%を上回る「6%程度」を目標にする方針だ。
こうした大幅アップの要求が続出する直接のきっかけとなったのは、ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格などの急騰による世界的なインフレのため。日本でも原油価格の上昇によって電気・ガソリン価格が上昇し、それが加工食品など幅広い分野に波及していることから、国民の生活防衛意識は急速に高まっている。
総務省の消費者物価指数(生鮮品を除く)はデフレ景気によって20、21年と2年連続のマイナスだったが、22年に入ると上昇。1%以下だった上昇率が4月に2%台に乗せ、9月には3%台に。直近の10月は3.6%まで上昇している。これを反映して厚生労働省の毎月勤労統計も、月額賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金が4月のマイナス1.7%から10月の同2.6%(速報)まで7カ月連続のマイナスが続いている。
物価上昇率が10%前後の欧米諸国に比べると、日本の上昇率は低いものの、賃金の上昇も鈍い年が続いてきたことから、消費税率が5%から8%に上がった14年のマイナス2.8%をはじめ、実質賃金もマイナスとなる年が多く、デフレによる「負のスパイラル」から抜け出せなかった。デフレ脱却を目指した「アベノミクス」も株価上昇や失業率低減には効果を見せたものの、肝心な賃金上昇には結び付かないまま終わってしまった。
今回の労組側の高額要求に対して、政府も経営者側も理解を示している。岸田政権は目玉政策の「総合経済対策」の中で、...
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