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2022年11月14日

「賃金デジタル払い」解禁の省令改正、厚労省が近く公布

期待を寄せる資金移動業者、様子見の企業

 キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「賃金デジタル払い」について、厚生労働省は近く労働基準法の省令改正を公布する。働く人の希望と同意を前提に、賃金をスマートフォンの決済アプリに振り込むことが可能になるもので、賃金を支払う企業と受け取る労働者、媒介する資金移動業者に新たな変化が訪れる。4月施行に向けて識者と労使を招いた公聴会=写真=を開くなど、詰めの準備を急ピッチで進める厚労省。関係者の思惑と課題が交錯する中、解禁前夜の動きを探る。(報道局)

sc221114.jpg 「賃金デジタル払い」は、企業が労働者の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込む仕組み。実現には「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労基法第24条第1項の省令改正が必要で、今回、例外で認めている「銀行口座・証券総合口座」に「資金移動業者」を加える。金融庁に登録しているキャッシュレス決済サービス事業者は85社(2022年9月末現在)あり、大手では「PayPay(ペイペイ)」や「d払い」など。参画を希望する事業者の申請と安全性などの審査が施行後となるため、実際の運用は来年夏以降となる見通しだ。

 省令改正の中で、取り扱いができる資金移動事業の指定要件として、
(1)賃金支払の口座残高の上限額を100万円以下に設定。また、上限を超えない措置を講じる
(2)破綻時には口座残高の全額を速やかに弁済できる保証スキームを有する
(3)不正な為替取引などで損失が生じた場合の補償の仕組みを有する
(4)最後に口座残高が変動した日から10年間は、労働者が当該口座を利用できる
(5)口座への資金移動が1円単位でできる
(6)ATMの利用などで、通貨で1円単位で賃金の受け取りができる。また、毎月1回はATMの利用手数料の負担をなくす
(7)業務の実施状況や財務状況を厚生労働大臣に適時報告できる
(8)業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、十分な社会的信用を有する
――の8項目を明記した。

 こうした省令改正案を踏まえて、11月2日に開かれた公聴会には皆川宏之氏(千葉大大学院教授・公益)、皆川知果氏(連合女性中央執行委員・労働者)、奥村英雄氏(凸版印刷執行役員人事労政本部長・使用者)の3人が公述人として出席。この中で...

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