物価上昇が止まらない。総務省が21日に発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、20年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合で前年同月比3.0%上昇と、ついに3%台に達した。しかし、働く人の賃金はCPIの伸び率を下回ったままで、家計を圧迫している。大きな要因が急激な円安の進行であり、先行きは混沌としている。(本間俊典=経済ジャーナリスト)
消費増税の影響を除くと、CPIの上昇率が3%台となったのはバブル崩壊直後の1991年8月以来、およそ31年ぶり。ウクライナ危機に伴う原材料価格の高騰に加えて、記録的な円安が輸入材の価格を押し上げている。中分類でみると、電気代・都市ガス・水道などのエネルギー価格が前年同月比17.4%上昇しているのが突出しており、石油製品も同9.1%、生鮮食品を除く食料も同5.9%値上がりしたのが目立つ。
他の先進国と比べると、米国の8.3%、ドイツの7.9%、韓国の5.7%(いずれも8月)、英国の10.1%、フランスの6.1%(いずれも7月)など、日本よりはるかに上昇率の高い国が多い。それにもかかわらず、日本の上昇率が「高まった」と注目されるのは、賃金が上がらないためだ。
厚生労働省の毎月勤労統計によると、働く人の名目賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金は、今年に入って1~3月は低水準ながらプラスだったものの、物価上昇が本格化した4月からマイナスに陥り、8月まで5カ月連続のマイナスが続いている=グラフ。賃金が上がってもそれが物価上昇に追いつかず、生活水準が下がっていることを意味している。
この間、春闘で企業の賃上げが相次いだが、連合の集計では平均賃上げ率は2.07%、経団連の集計でも同2.27%で、4月以降の物価上昇率を下回る水準のため、実質賃金もマイナスが続いているのだ。プラスに転じるためには、物価上昇率を下げるか、賃金の上昇率を高めるかのいずれか、あるいは両方を実現させるしかない。
今のところ、物価上昇率を下げるのはまず不可能だ。それは...
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